Sayalay's Dhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。

<パオ・セヤドー問答集~007>問答(二)問2-1

#007-150702

問2-1 初心者はどのようにして定根と慧根をバランスさせればよいですか?どのようにして安般念(ānāpānassati)によって智慧を修行するのですか?

答2-1 初心者にとっては、定根と慧根をバランスさせる事はあまり必要とされません。というのも、彼らは初心者であって、彼らの五根はいまだ未熟だからです。最初に修行を始めたころ、通常は内心において多くの妄想の干渉を受けます。そのため、五根はまだ力強くなっていません。五根が堅固でかつ力強くなったときにのみ、それらのバランスを保つ必要性が出てきます。ただ、初心者が最初の段階で五根のバランスを取れるのであれば、それはそれで大変に結構です。

例を上げて言いますと、あなたが現在修行しているのが安般念だとして、安般念とは正念を保持して呼吸の気息を観察する事を意味しますが:気息を知っているのが慧(paññā)、気息を憶念しているのが念(sati)、一心に気息に専注しているのが定(samādhi)、気息を明らかに知るために努力する事を精進(vīriya)、安般念がジャーナを引き起こせるという確信を持っている事を信(saddhā)といいます。

初心者は、強くて力のある五根を保持するようチャレンジしてみる必要があります。彼らは安般念に対して十分に強い確信を持たねばなりませんし、強力な努力によって気息を明確に知っていなければなりません。気息に対して強力な憶念を保持し、気息に対して、強力な専注を保持し、気息を明確に知っていなければなりません。彼らは五根をして堅固で力強いものになるようチャレンジしなければならず、かつそれらのバランスを保つよう試してみる必要があります。もし五根の中の一つが強すぎると、その他の根が効力を発揮する事ができなくなります。

例えば、信根が非常に強い時、精進根は気息において名法を維持する機能を実行できなくなります。というのも、強すぎる信心(=確信)は高ぶりを引き起こすからです。同様にして、念根は気息において憶念を打ち立てる事ができなくなり、高ぶりの為に、定根も、気息において専注するという機能を発揮できない事になり、慧根もまた気息を知ることができなくなるのです。

精進根が強すぎる時、その他の根も自己の役割を適切に果たせなくなります。というのも、強すぎる精進根は、心をして掉挙不安にさせるからです。強すぎる精進根は、心を不安にさせ、そのため、信・念・定および慧が弱くなり、それぞれが自分の役割を果たせなくなるのです。念根が弱い時は、何事もなすことができず、あなたは気息に専注することができず、気息を判別することができず、同時に確信(=信心)もなくなります。

今、あなたは止禅を修行しています。止禅を修行している時、強くて力のある定は好ましいのですが、しかし、余りに強い定は怠惰を引き起こします。怠惰が起こると、その他の信・精進・念・慧などの諸根が非常に弱くなり、それらが機能を発揮する事ができなくなります。

初学の時は、智慧はまだ低劣で、ただ自然の呼吸による気息を知っているという状態です。故に、止禅を学び始めたばかりの初心者にとっては、気息を明確に知っていればよい、という事になります。取相または似相が出てきた時に、それが取相であるとか、似相であるとかを知っているのも、智慧です。この種の智慧以外、修行において、余り多くの知識を運用するのはよい事ではありません。というのもあなたはいつも議論や論評ばかりしている事になります。もし、瞑想修行者が、安般念についてあまりに多くの議論と論評をするならば、我々は、彼の智根が過剰であると言います。議論と論評は、その他の根を弱くさせるため、それぞれの機能が発揮できないようになります。

故に、初心者が五根のバランスを保持できる事はよい事です。どのようにして五根をバランスさせるのか?我々は強くて力のある正念と精進によって、気息を明確に知り、かつ確信(=信心)に満ちて気息に専注します。前回の講座でも我々は五根のバランスについて話しました。(完)

<禅修問題与解答(パオ禅師等講述)>中国語版より訳出。  

(翻訳文責 Pañña-adhika sayalay)

 

初めてご来訪の方へ:15年1月緬甸(ミャンマー)から日本への帰路の途中、台湾に寄りました。パオ・セヤドーの著作を頂けると聞き、新北市の寺院を訪問して上記<禅修問題与解答(パオ禅師等講述)>(中国語版)を入手しました。<パオ・セヤドー問答集(仮題)>として、毎日又は隔日、一遍ずつ翻訳して掲載する予定です(出張時除く)。「智慧の光」「如実知見」の姉妹版として、パオ・メソッドに興味のある方のご参考になれば幸いです。