Sayalay's Dhamma book

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<パオ・セヤドー問答集~011>問答(二)問2-3>全文

#011-150706

問2-3:なぜ名色法を透視した後、必ず縁起(paṭiccasamuppāda)の第一法と第五法を修行しなければならないのですか?

答2-3:上座部の仏法においては、清浄(visuddhi)は七つの段階があります。ここでは前の五段階について解説したいと思います。それらは:

  1. 戒清浄(sīla-visuddhi):
  2. 心清浄(citta- visuddhi):八定(samāpatti)と近行定:
  3. 見清浄(diṭṭhi- visuddhi):名色を分析する智慧(nāmarūpa-pariccheda-ñāṇa 名色識別智):
  4. 度疑清浄(kaṅkhāvitaraṇa- visuddhi):因果を判別する智慧(paccaya-pariggaha-ñāṇa縁摂受智)。言い換えれば、我々はこの段階において縁起(paṭiccasamuppāda十二縁起)を透視しなければなりません。
  5. 道非道智見清浄(maggāmaggañāṇadssana-visuddhi):思惟智(sammasana-ñāṇa)と生滅随観智(udayabbaya-ñāṇa)。これが観禅(vipassanā)の始まりです。名色及びその因縁は、行法または有為法(saṅkhāra)と言います。

観禅(vipassanā)を始める前に四種類の清浄があるります。なぜか?観禅(vipassanā)とは名色及びその無常・苦・無我の本質に関する因と縁への領悟、了解であるからです。もし、今だに名色及びそれらの因縁を理解していないならば、我々は如何にしてそれらの無常・苦・無我である事を領悟、了解する事ができるのであろうか?どのようにして観禅(vipassanā)するのでしょうか?ただ、徹底的に名色およびその因縁を透視した後、我々は初めて観禅(vipassanā)を修行する事ができるのです。

  1. それらは生じた後、即刻消滅します。故にそれらは無常です。
  2. それらは不断に、生滅する危機に遭遇しています。故にそれらは苦です。
  3. それらは実体(自体 atta)がない。安定しておらず壊れないという本質を有しておらず、故にそれらは無我なのです。

このようなかたちで無常・苦・無我を領悟、了解するのが真正の観禅(vipassanā)です。故に、観禅(vipassanā)を修行する前、我々は修行者に名法、色法と縁起法を透視するよう指導します。注釈の中で解説して「aniccanti pañcakkhandhā」と言いますが、その意味は:無常とは五蘊である、という事です。五蘊は、言い換えれば名色とその因縁です。故に、真正の観禅(vipassanā)は、五蘊と因果に対する了解に支えられているものなのです。

仏陀は法を聞く者の機根に応じて四種類の、縁起を透視する方法を指導しました。《無碍解道》の中に別にもう一つの方法が書いてあります。故に合計で五種類の方法があります。第一の方法(第一法)は十二縁起を順番に、無明の縁によって行があり、行の縁によって識があり、識の縁によって名色があり・・・と言う風に、透視していくものです。第一法は、上座部仏教において非常に流行しましたが、しかし、いまだ《アビダンマ》を学習していない人にとっては、第一法を修行する事は非常に困難です。すでに徹底的に《アビダンマ》を学習した人は第一法を修行する事はできますが、彼らが修行する時、やはり多くの困難に出会うでしょう。

初心者について言えば、シャーリプトラ尊者が指導して《無碍解道》に書かれている第五法は、比較的容易に修行ができます。第五法は、五種類の過去因が五種類の現在果を生じさせ、五種類の現在果が五種類の未来果を生じさせる事を透視するものです。これが第五法の要点です。もしあなたが自ら体験してそれらを理解したいと思うならば、あなたは修行してこの段階まで到達しなければなりません。

系統的に第五法を修行した後なら、第一法の修行は大きな困難はないでしょう。故に我々は、先に縁起の第五法を教え、その後で第一法を教えます。多くの時間があって、多くの修行がしたいと思っている人は、我々は五種類の方法をすべて教えます。仏陀は、聞く者の機根に応じて異なる方法で縁起を教えましたが、しかし、その中のどれか一種類を修行すれば、涅槃を証悟するには十分です。五種類の方法の中で、上座部仏教では第一法が大変に流行しましたので、第一法の修行は必要であると考えます。故に我々は第一法と第五法を指導します。

ある日、アーナンダ尊者が四種類すべての方法で縁起の修行をした後、夕方、彼が仏陀の前に来て仏陀に謁見すると同時に「世尊、縁起の法は奥深いけれども、私にとっては非常に簡単です」と言いました。仏陀は答えて曰く「Etassa cānanda、dhammassa ananubodhā、appaṭivedeāevuamayaṃ pajā tantākulakajātā、kuiāgaṇṭhikajātā 、muñjapabbajabhūtā apāyaṃ、duggatiṃ vinipātaṃ saṁsāraṁ nātivattati 」―その意味は、もし随覚智(anubodha-ñāṇa)と通達智(paṭīvedha-ñāṇa)によって縁起を知るのでなければ、生死の輪廻と四悪道(apāya)から解脱する事はできない、というのです。随覚智(anubodha-ñāṇa)とは:名色識別智(nāmarūpa-pariccheda-ñāṇa)と縁摂受智(paccaya-pariggaha-ñāṇa)の事です。通達智(paṭivedha-ñāṇa)とは、すべての観禅(vipassanā-ñāṇa ヴィパサナ智)の事です。故に、もし、随覚智と通達智でもって縁起を了解するのでなければ、修行者は涅槃を証する事ができない。この部分の経を引用した後、注釈ではこう言っています。もし縁起を理解しないのであれば、誰も生死輪廻を解脱する事はできない。たとえ夢の中であっても。(完)

 

<禅修問題与解答(パオ禅師等講述)>中国語版より訳出。  

(翻訳文責 Pañña-adhika sayalay)

 

初めてご来訪の方へ:15年1月緬甸(ミャンマー)から日本への帰路の途中、台湾に寄りました。パオ・セヤドーの著作を頂けると聞き、新北市の寺院を訪問して上記<禅修問題与解答(パオ禅師等講述)>(中国語版)を入手しました。<パオ・セヤドー問答集(仮題)>として、毎日又は隔日、一遍ずつ翻訳して掲載する予定です(出張時除く)。「智慧の光」「如実知見」の姉妹版として、パオ・メソッドに興味のある方のご参考になれば幸いです。