Sayalay's Dhamma book

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パオ・セヤドー講述「菩提資糧」(翻訳文)-188

問3-12:

こういうことを言う人がいます:

禅の修行を始める前、先に福徳を累積しておかねばならない。そうでなければ、多くの困難に出会う。このことは真実でしょうか?

答3-12:

もし、ここで言う「福徳」が、過去世において行った福徳の行いを意味するのであれば、この言葉は真実です。

二種類の種子がある:

すなわち、智慧(vijja 明)の種子と、善行(carana 行)の種子である。

善行の種子とは、布施、持戒、禅定の修行など等を指す。過去世において蓄積した善行の種子は、あなたをして今生において、良い父母を得、良い友や導師に出会いえるようさせ、また、仏陀の教えを聞くことができるようにさせる。

智慧の種子とは、四界分別観、色業処、名業処、縁起及び観禅の修行を指す。過去世において蓄積した智慧の種子は、あなたをして仏法を理解できる人にさせる――特に、四聖諦が分かる人に。

もし、一人の人間が、善行の種子を具備していていながら、智慧の種子を欠いているならば、彼には仏陀の教えに出会うチャンスはあっても、仏法を徹底的に了解することできないーーそれはちょうど両足があって、目が見えない人のようである。

たとえば:仏陀の時代、名前を真諦(Saccaka)という弁論家がいた。

仏陀は彼のために二つの長い経を述べたが、彼は依然としてどのような道も果も、証悟することができなかった。

彼は、心の中では、仏陀の言う五蘊は無常であり、無我である事を認めていたが、しかし、口頭では、認めることを拒否した。

仏陀は、彼がいかなる道も果も証悟することができないことを知ってはいたが、それでも彼のために二つの長い経を述べた。

というのも、仏陀は、彼が智慧の種子を得た後、それは、仏陀が般涅槃したのちのことであるが、約400年の後、スリランカに生まれて、大黒護仏(Mahākāḷabuddharakkhita)という名の大長老になり、かつ、その時に阿羅漢果を証悟することを、予見したからである。

もし一人の人間が、智慧の種子を具備していながら、善行の種子に欠けている場合、彼は仏法に出会えば、仏法を理解・会得することができるものの、しかし、彼の場合は、仏法に出会うのが難しい。

それは、ちょうど、視力は良いのに、足の無い人のようである。

たとえば:アジャセ王(King Ajatasattu)は、元々は十分な善根を具備していて、仏陀の開示した《沙門果経 Sammaññaphala Sutta》を聞いたときソータパナ道果を証悟することができたのだが、しかし、彼は道果を証悟することができなかった。というのも、自分の父親を殺す前に仏陀に会うことができなかったからである。

このように、善行の種子が欠けているために、彼は適切な時期に仏陀と会うことができなかったのである。

同じく仏陀の時代、有る時、仏陀は年老いた一組の乞食の夫婦を見て、そして微笑した。

アーナンダ尊者は、仏陀になぜ微笑するのか、と問うた。

仏陀は彼に答えた:

あの乞食の夫婦、夫の名は、大財長者子といい、もし彼らが早い時期に仏法の修行をしたならば、夫は阿羅漢果を証悟することができ、妻はアナーガミ道果を証悟することができた。

もし彼らが中年の時に仏法の修行を始めたならば、夫はアナーガミ果を、妻は斯陀含道果を証悟することができた。もし彼らが晩年の初期において、仏法の修行をしたならば、夫は斯陀含道果を、妻はソータパナ道果を証悟することができた。しかし、彼らは、乞食に落ちるほど蹉跌・零落し、今となっては年老いて、身体も弱くなって、仏法の修行ができない。

彼らは仏法を修行するチャンスを逃し、どのような道・果を証悟することができないでいる。

このことから、善行の種子と智慧の種子の両方を同時に具備することは非常に重要であることが分かる。

このようにして初めて、仏陀の教えに出会うことができ、仏法を理解することもできるようになるのである。

今生においてなした福徳に関して言えば、先ほど私が私の開示の中で話したように、今生において、阿羅漢果を証悟することのできる人間にとっては、今生の福徳は、あまり重要ではない。

彼らは、戒・定・慧の三学の修行に専念し、阿羅漢果の証悟に尽力するべきである。

今生になした福徳は彼らの来世に利益を齎すことはない。というのも、彼らはもう生死輪廻をすることがないからである。

しかしながら、いまだ生死輪廻する人にとっては、今生でなした福徳は、非常に重要なものである。

(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。(つづく)

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<パオ・セヤドー講述「菩提資糧」1999年中国語版→日本語訳出

翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>