<実例>
更に明確に理解を進めるため、私は、実際にあった例をあげて、禅の修行者が、どのような現象を識別できるのか、を説明する。
ある一人の女性の修行者が、前世の臨終時の名色法に専注し、かつ追跡調査しているとき、彼女は一人の女性が、果物で以て、比丘に供養した業が見えた。
その後、四界の識別から始めて、彼女はもう一度、比丘に果物を供養した時の(+己の)名色法を追跡調査した。彼女は、その女性が非常に貧しく、かつ教育を受けたことのない田舎の住人で、己の苦境を鑑みて、比丘を供養することによって、来世は都会に生まれて、教育を受けた女性になりたいと発願したのである(+ことが分かった)。
この例では、無明(avijja)とは、「都会に生まれて教育を受ける女性」を実体と見做す事であり;
愛(taṇhā)とは、都会に生まれて教育を受けたいと渇望することであり;
取(upādāna)は、都会に生まれて教育を受ける女性の生活に執着することである;
行(saṅkhā ra)は、比丘に果物を供養した善良なる意志(kusala‐cetanā)である;
業有とは、その行の業力である。
今世において、その女性は緬甸(=ビルマorミャンマー)の大都市に生まれて、教育を受けた女性になった。
彼女は正見でもって、以下の事を直接透視した;前世において果物を供養した業力が、如何にして、今世の果法(異熟)の五蘊を造りだすか、を。
このように因果を識別することのできる能力を、縁摂受智(paccaya-pariggaha-ṅāṇa 因果を識別する智慧)という。
あなたがこのように前世を識別し、かつ、前世の無明、愛、取、行及び業という、この五つの因と、今世の結生識、名色、六処、触と受という、この五果を観察することができたならば、同様の方法で、徐々に、過去にさかのぼって、以前の二番目の世、三番目の世、四番目の世・・・と引き続き、識別しなければならない。
このようにして、あなたはあなたのできうる限りにおいて、過去の多くの世を識別しなければならないのである。
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。(つづく)
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<パオ・セヤドー講述「菩提資糧」1999年中国語版→日本語訳出
翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>