<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
達白が最も好きなのは、五月のウェーサカ祭りであった。
この日は、仏陀の生誕、証悟、入滅の日である。
卉晒村の五月は、一年の内の最も美しい月で、雨季の始まり、最初の慈雨を受けて、各様各色の花が、怒涛のように咲き乱れる。
仏殿の中の、供養に使われる、幾つもの机の上には、心を込めた花が飾られ、仏に供えられた花々は、妖艶な色彩を放っていた。
夜、僧侶たちと村民は、蝋燭をもって布薩堂を巡り、その後で、出家者が皆を先導して、古老の偈頌を念じ詠い、世尊と仏法を讃嘆する。
これに参加した信徒は、荘厳な法会の中にいて、濁った心は清らかになり、安らぐ。
達白と父親の、心霊上の関係はますます親密になり、最初達白は躊躇したものの、後になって、父親にもう一つの世界、己の神秘的で奇妙な内心の世界について告白した。
達頌は、忍耐力があり、疑惑の気持ちを抱えながら、遊びが好きな天人の話や、夢の中の冒険談を聞いてあげた。
これらの奇怪で幻想的な漫遊の物語について、彼は娘の話を、聞いてはあげたものの、その真実性については、保留した。
達白が七歳の時、彼女は、まるで映像を見ているかのように自然に浮かび上がる、はっきりとした、己の過去世を思い出した。
彼女は過去において、ある時は人であり、ある時は別のもので、医師であったり、王女であったり、普通の市民であったり、一羽の鶏になったこともあった。
彼女は非常に天真爛漫に、急いでこの事を、父親に告げた。
達頌は、娘の天眼による経験を聞いて、非常に不機嫌になり、同意できないと思い、彼の顔色は黒く変わり、声も変化して、威圧的な語気で達白を警告したーー話し始めた時は温和であったが、すぐに厳しくなったーーこのことを、誰にも話してはならない!
彼は村の人が、彼女が発狂したと思うだろう事に心を痛め、また、もっとよくない事件が起きる事を心配した。
このような小さな村で、このような事がひとたび喧伝されたならば、彼女は一生、汚名を背負って、生きていかねばならないに違いない。
徐々に、達白は、家に母親がいない状況に慣れ、伝統的な婦女の責任を請け負い、彼女の姉と共に、家事を分担した。
彼女は姉より丈夫で力があり、意志も堅固であった。達白は彼女の母親のように、色々な些末な事柄を、ちょうどよく差配し、解決していった。
(3-7につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は、
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<原題「美琪喬ーー一位阿羅漢尼修道証果之道」Dhammavamsa Publication
中国語版→日本語訳出 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>