<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
毎朝、アチャン・マンが村に入って托鉢する時、達白はいつも、食べ物を布施した。
彼女は村人たちと一緒に列を作って、アチャン・マンが自分の目の前まで来るのを待って、食べ物を鉢の中に入れた。
托鉢の時、アチャン・マンはめったに人と話をしなかったが、達白の禅の修行が順調だった夜の、その翌朝、食べ物を受け取る時に、彼女に食事の後に、お寺に来るようにと、言った。
食後しばらくすると、達白は、家人と一緒にお寺に行き、自分の特殊な体験を、アチャン・マンに報告したが、寺院にいる出家者は皆、彼女が夜毎に、異なる心霊の領域に入り込む、その物語を聞きたい一心で、また、アチャン・マンがどのような指示を出すのかを知りたくて、彼女の周りを取り囲んだ。
アチャン・マンはいつも親しげに達白を呼び寄せ、彼女の話す一言一言を、慈悲の心で、聞き入った。
彼は、達白が猪突猛進のタイプで、活発な心を持っている事、その為に、非常に容易に、各種の境界を体験することができるのを知っていたが、これは一般の人が、持ち合わせていない能力であった。
この方面において、アチャン・マンは経験が豊富で、その為に毎回、そのものずばり、的確な指導をすることができた。
この徳が高く、年長の禅師と、彼の年若い弟子は、瞬く間に、深くて厚い師弟関係を築きあげたが、達白はアチャン・マンを尊敬する余りに五体投地し、また、彼が己の為に心血を注いで、指導してくれる幸運に、感謝した。
雨安居が終わって間もなくのある日、アチャン・マンは、人を遣わして、達白にお寺に来るように伝えた。
アチャン・マンは、彼と弟子たちは、この地域を離れて、頭陀僧の伝統に従って、四方八方行脚しては、雲水の遊行をするのだと言った。
次に彼は眉を上げて、彼女を見ながら、唇に浅い微笑を浮かべながら、男友達がいるのかどうか、聞いた。
達白は、首を振って、いないと答えた。
彼はゆっくりと頷くと、もし君がそう願うのならば、出家してメーチになり、私と一緒に行脚する事ができるが、最も重要なのは、父親の同意を得る事だ、と言った。
彼女は彼を見ながら、何を言っていいか分からず、黙っていたが、彼は静かに、彼女の答えを待った。
達白は、どのように答えればよいのか、己の気持ちと考えを整理して、彼について出家したいけれども、彼女の父親が絶対に許さないだろう、と言った。
アチャン・マンは彼女を安心させるように、笑顔で頷ずいて見せ、彼女を家まで送って行った。
達頌は、彼女の願いには冷ややかで、彼女の出家を許さなかった。というのも、彼女が万一、後になって還俗を希望したなら、嫁ぎ先は決して、見つからないだろうと思うが故に。
彼は、彼女に、平凡な家庭生活を送って欲しかったし、家事の合間に、縁に従って、修行すればよいと思った。
アチャン・マンはそれを聞くと、会心の笑みを浮かべ、達白に、忍耐して待ち続ければ、何時の日にか、必ず願いがかなう、と励ました。
そして、現在のこの段階においては、彼女は必ず彼との別れの時の約束を厳格に守るようにと、求めた。
それはすなわち、彼がここを離れて後、決して禅の修行をしないこと!
彼女は分に安じて、世俗の生活を送り、因と縁が熟した暁に、二度目の禅の修行を再開する事。
彼は、将来一人の高明な禅師が現れて、彼女が正道を歩めるよう、指導してくれるであろう事を保証する、と言った。
ただ、眼前の状況で言えば、彼女は忍耐力をもって、この期間を過ごさなければならなかった。
アチャン・マンは、達白が猪突猛進するタイプで進歩も速いが、しかし、未だ十分な力がなく、禅の修行で問題が起こった時に、己自身を守るすべを知らない事を心配した。
彼がここを離れた後、万一、禅の修行で偏差、副作用が出た時、それを処理してくれる人がいない。彼女には、彼女が正道を離れた時に、状況を掌握して糺してくれる、一人の高明な禅師が、必要であった。そうでなければ、彼女は容易に間違った道に迷い込み、己自身を傷つけてしまう。
このような事から、アチャン・マンは、彼がこの地を離れた後、達白に、禅の修行を禁じたのである。
達白は、アチャン・マンが、これ程厳しく、彼女が禅の修行を続けることを禁止する理由が分からなかったので、己の好きなことを止めなければならないことが悲しかったが、アチャン・マンへの堅固な信心の故に、彼女は突如として、修行を中止した。
この後、彼女が再び座禅に取り組むまでに、20年の歳月を必要としたのである。
(3-24につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は、
<菩提樹文庫>まで。ご協力、よろしくお願いいたします。
<原題「美琪喬ーー一位阿羅漢尼修道証果之道」Dhammavamsa Publication
中国語版→日本語訳出 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>