Sayalay's Dhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。

般若の独り言~インドラの網(銀湖氏とカネミ油症事件)

台湾の中部地方に「原始仏教協会」という組織の事務所があります。

この協会を立ち上げたのは、銀湖氏という男性です。

彼がこの協会を立ち上げた頃、まずはタイに行き、

アーチャン・マンに関する資料を手に入れて、マン大長老の伝記を出版しました(『尊者アチャン・マン』『解脱心』)。

現時点で、彼が出版した中国語の仏教書(テーラワーダ系)は15冊(『念仏とは何か』『密教双修批判』『初果について』等)あり、その仏教書の配布を担う組織は、台湾全土に六ヶ所あります。

この銀湖氏、実は、カネミ油症事件の被害者です(中国語では、米糠油中毒事件)。

台湾でもカネミの食用油が売られていて、彼の実家全員と、彼自身の家族全員が、中毒しました。

弟さんは自死、ご本人は離婚の後、一家は離散したそうです。

1979年10月の事です(台湾の仏教徒には菜食主義者が多く、菜食主義者の間では、特にこの米糠油に人気があり、1000人の中毒者を出した)。

しかし、彼はここで歯を食いしばって、立ち止まりました。

こう考えたのです:

「中毒でどす黒く変色した皮膚、全身に痛みが走る身体、消化器系統も、循環器系統も、呼吸器系統も、生殖系統も、脳神経系統も、すべて侵蝕されてしまった。

カネミを恨んでも恨みきれないが、しかし、身体とは何だろうか?

この身体、この色蘊は、何十年の後には、地球に捨て置くものだ。

来世に持って行くものは・・・・・・

そうだ!この心だ。

生きている内に心を清らかにして、清らかな心をのみ、

来世に持って行こう。

他者への怒り、憤怒は、色蘊と共に、この地球に置いて行けばいい。」

 

彼は中毒発症の後もタイへ通い、テーラワーダを学び、テーラワーダを台湾に導入し、台湾テーラワーダ振興の先駆者・立役者となったのです。

私は彼の本を翻訳(抜粋)して、WEBに載せ、皆さまに読んで頂いております。もし、私が翻訳した仏教書の一文を目に止めて、それに感動された方がいらしたら、その遠因は<米糠毒油>という事になります。

この世はインドラの網です。

網の結び目には宝石が結び付けてあって、この宝石を一つ抓めば、網全体が持ち上がる。そして、宝石同士、お互いを映し合って、どこまでも続く。私のブログ(の翻訳文)を読まれる方は、カネミ油でつながっている・・・なんと不思議な縁でしょうか?

言い忘れましたが、彼は台湾の少数民族です。

台湾には、露骨なヘイトこそありませんが、山岳地帯に暮らす少数民族は、貧困にある傾向があります。

経済格差に愚痴も言わず、カネミを許し、台湾のテーラワーダ振興のために尽くす人がいる・・・私も、私の出来る限りの法施・善行を行って、清らかな心を共連れに、次は・・・そう、天界、出来うれば<兜率天>を目指したいものだ、と思っています。

   <緬甸パオ森林僧院/ヤンゴン分院所属/Pañña-adhika Sayalay般若精舎>