<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
小善賢(Cūḷasubhaddā)
《六牙本生經》(Chaddanata Jātaka)は、我々の菩薩の本生の物語である。
その一世、彼は一頭の、名を六牙(Chaddanta)という象王であった。
これは、舎衛城の一人の比丘尼に関して話された時の物語である;
ある日、その比丘尼が祇園精舎において、仏陀の開示を聞いている時、仏陀の完全なる品格を敬慕するあまり、己自身の過去生において、彼の妻になったことがあるのではないか、それを、知りたいものだと、思った。
その時、宿命智(jātissara-ñāṇa)が即刻、彼女の心中に生じ、彼女は、一生また一生と、過去世を思い出した。
過去において、彼女は六牙象王の妻小善賢であった、その一世の記憶が、彼女の心中に生じた。
彼女は非常に喜んで、歓喜の余り笑い出した。
しかし、彼女はまた、考えた;
己自身の夫のために、その利益を考慮する妻は非常に少なく、大多数の女性は己自身の夫の利益の事を考えない。
故に、彼女は己自身は、夫の利益を考えるよい妻であったかどうか、知りたいと思った。
彼女が更に一歩進んで、回想している時、彼女は、己自身が夫を死に至らしめた事を知って、大いに泣き始めた。
その時、仏陀は、六牙本生の物語を語っていた時であり、故に、比丘尼が一時は笑い、一時は泣くという事柄についての説明をした。
ある一世、菩薩は、六牙象族の象王として生まれた。
彼らの族群は、合計で8000頭の象がいた。
過去世での業の累積により、彼らはみな天空を飛ぶことができた。
菩薩の身体は純白で、顔と足は赤かった。
彼が立つと、彼の身体の六つの部分が地面についた、すなわち、四つの足と、鼻と牙であった。
彼は六牙湖の傍の金色山窟(Kañcanagūhā)に住んだ。
彼の主要な伴侶は、大善賢(Mahāsubhaddā)と小善賢(Cūḷasubhaddā)であった。
ある日、六牙象王は、沙羅(Sāla)樹林の中の沙羅の花が満開であると聞き、象群を引き連れて、そこへ行った。
六牙象王は、その身体でもって、一本の沙羅樹を重撃し、内心の喜びを表現した。
その重撃のため、沙羅樹の枯れ枝、葉、及び赤蟻が小善賢の上に降りかかり、沙羅の花は、大善賢の上に落ちた。
その原因は、その時ちょうど一陣の風が吹いて、小善賢が風下にいて、大善賢が風上にいたが故であった。
これはただ、風の吹く方向の問題にすぎず、六牙象王に悪意はなかったものの、しかし、小善賢は、この事に大いに不満であって、常に恨んだ。
暫くして、六牙象王と、すべての象は、みな、500人のパッチェカ仏、彼らはみな、摩訶波陀瑪瓦第皇后(Queen Mahā-Padumavatī)が生んだ子供達であるが、に果物と日用品を供養する機会があった。
ある日、六牙象王は、500人のパッチェカ仏に供養をしている時、小善賢はもまた、彼らに野生の果物を供養し、一つの願を発したのである。
彼女は、まさに一幅の絵を描き出した。
彼女はパッチェカ仏は、徳行が最高の人、無上の福田であることを理解していた;
そして、小善賢を含む、すべての象もまた、徳行のある者であった;
供養の物品は正当な方法で森林から得たものであり;
供養の前、供養の時、供養の後において、彼女は、業には非常に大きな果報がある事を深く信じていた;
彼女もまた、戒行の良好な者の願望は、その清浄なる戒行によって、円満に達成できる事を理解していた。
その時、彼女は、出来うる限りの緻密さで、すべての特徴を持つ、一人の女性の像を描き出した:
「尊者、この功徳をもって、身体が壊滅し、命尽きる時、
1、私をして、摩達王(King Madda)の家に生まれせしめて、王女となれます様に。
2、私の名前は、善賢(Subhaddā)であります様に。
3、私は、波羅奈国王の皇后になれます様に。
4、私は波羅奈国王を説得して、私の心願が実現します様に。
5、私は一人の猟師を指名し、派遣して、六牙象王の牙を切り取れます様に。
なぜ、彼女は、摩達王の家に生まれて、王女になりたいという願を立てたのか?
というのも、彼女は、一人の男性を説得して、己の手伝いをさせて心願を実現するには、美しい美貌は絶対に必要であることを理解しており、また、摩達王家は、美女を産じる家系であるが故に、彼女は摩達王の王女になりたいという願を立てたのである。
彼女は、波羅奈王の勢力は、その他の国より更に強大であることを理解していたが故に、彼女は、波羅奈王の皇后になりたいという願を立てたのである。
この様に、絵を描いた者の願望に沿って、すべての特徴を具備する所の、女性の形象が人類世間の中において、顕現したのである。
その結果、彼女は、身体が壊滅し、命尽きた後、願った通りに、摩達王家に生まれ、その後、波羅奈王の皇后になった。
彼女が皇后ーー地位が最高の女性ーーになった後、理論的には、森林の中の一頭の動物への怨恨など忘れ去ることが出来る様に思うのだが、しかし、彼女はこの恨みを忘れることなく、六牙象王を許すことがなかった。
彼女は己自身の心を制御することができなかったのである。
故に、あなたが業を造(ナ)す時、ぜひ、この物語を思い出してほしい。
というのも、業が熟する時、その果報から逃れることは非常に難しいが故に。
我々は、その続きがどうなっているか、見てみようと思う:
彼女は、心内に前世の恨みを抱え、どの様にして、六牙象王の牙を切り落とせばよいか、謀略を重ねた。
彼女は、国王のすべての猟師を呼び集めて貰い、その中から、名を所努達拉(Sonuttara)という猟師に、この任務を遂行する様に言った。
善賢は六牙象王が、黄色い袈裟を着ているパッチェカ仏を、非常に尊敬している事を熟知していたので、彼女は所努達拉に黄色い袈裟を着させた、というのも、この様にしれば、六牙象王は彼に危害を加えないが故に。
所努達拉は、七年七か月と七日の時間をかけて、ようやく六牙象王の住居にたどり着いた。
彼はそこで大きな穴を掘り、上を覆って隠した。
象王がその穴に落ちると、彼は象王に毒矢を射た。
六牙象王は、己が被害に遭っているのに気が付いた時、即刻所努達拉を攻撃しようとしたが;
しかし、所努達拉が黄色の袈裟を着ているの見たため、六牙象王は、己自身を克己して、彼を攻撃しなかった。
所努達拉が、自分が彼を殺しにきた理由を述べた後、象王は、彼に自分の牙を切り落とす様に言ったが、所努達拉の力では、その牙を切り落とすことができなかった。
その時、六牙象王は、すでに傷付いてはいたが、また下顎が鋸で切られて、大きな傷口を開けていて、耐え難い痛みがありはしたが、しかし、象王は、己自身の鼻でもって、鋸を持って、己自身の牙を切り取って、所努達拉に渡し、その直後に死んだのであった。
所努達拉は、象牙の神奇な力でもって、七日の内に、波羅奈に戻ってきた。
善賢が己が派遣した人によって、己自身、前世に愛した夫が惨殺されたと知った時、彼女の心も砕け散って、死んでしまった。
こうしたことから、我々は理解しなければならない:
報復したいと思う心は、内心の混乱を引き起すだけであって、それが自己の破滅を齎すのである。
この物語の啓示する所を覚えておく事。
我々は寛大な心根を育成して、一切の怨恨を溶かし、胸襟を広くする事。
というのも、我々は以下の事を知っているが故に:
内に怨恨を持つ心は、己自身に非常に大きな傷害を齎すが、それは、如何なる人間が我々に齎す傷害より、なお大きいものがある。
このことから、衆生は己自身の心内の煩悩によって汚染されることが分かる。
次に、大蓮華辟支仏の描いた絵を見てみよう;
(10-28につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等ほぼ原文ママ。★誤字脱字を発見された方は<菩提樹文庫>までお知らせ下さい。http://bodaijubunko.sakura.ne.jp/index.html
<中国語版→日本語訳出 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>