Sayalay's Dhamma book

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是誰庵仏教談義その7>両雄あい並び立つ~佐々井師とゴエンカ師

半年ほど前、フリーカメラマンの次男が「インドに行って、佐々井秀嶺師と会って来た」と言いました。私がどんな話をしたのか訊ねたところ、「イヤ~、あんな偉い人に、俺、何言っていいか分からなくって・・・、写真撮らせて下さいって言っただけ」だそうです。

佐々井秀嶺師は、世界的にも有名な、インドでの新仏教徒運動の指導者です。インドはヒンズー教(前身はバラモン教)が盛んで、内部に四姓差別肯定の社会的病理を抱えています。そのヒンズー教の内部にいては決して肯定される事のないシュードラ階級の人達が、佐々井秀嶺師を指導者として仰ぎ、ヒンズー教徒から仏教徒に改宗しているのです。仏教には、人を出身で差別してはいけないという、清らかな教えがあるからです。

ゴエンカ師(故人)はビルマで生まれたインド人で、大企業家の跡取り息子。一生懸命商売している内にうつ病になり、ウ・パキンという緬甸人に出会って瞑想を教えてもらい、自分のうつ病は、儲けたい、儲けたいという過剰な欲から発病したものだと言うことが分かり、その後、ウツは全快。家業の商売を信頼できる人に預けた後、ゴエンカ瞑想センターを世界中に建設した事で有名です。

ゴエンカ師は、新仏教徒運動の記念日などに頼まれて来賓として出席し、法話もするのですが、ある人が「あの新仏教徒運動は、輪廻を否定しているから、ゴエンカ師と考えが違う」「ああいう所には出ない方がいい」と注意したそうです。

ゴエンカ師曰く「我々は輪廻します。ですから、彼らの、輪廻はしない、けれど仏教徒になりたい、という運動方針は間違っています。しかし、シュードラに対する酷い差別のあるインドで、佐々井さんたちは奮闘し、立派な仕事をしています。輪廻するかどうか、いずれ彼らも分かる日がくるでしょう。私の法話は、遠慮なく輪廻の話をさせてもらっています。佐々井師からクレームは入りません。彼らの欠点を批判するより、今は団結の時です」と。

インドの新仏教徒運動が「輪廻はない」と打ち出したのは、「輪廻はある」と認めると、インドの支配者階層が「だから、お前たちがシュードラなのは、前世が悪いからで、我々に奉仕するのが当たり前」という、あしきバラモンの教えを持ちだすからだ、と私は思っています。

佐々井師も立派だけれど、ゴエンカ師も立派だな、両雄はあい並び立つのだなぁ、と思います(ちなみに、佐々井師が帰国して報告会を開いた時、誰かが「佐々井さん、瞑想はしないのですか?」と尋ねたら、「バカモン!そんな暇あるか!」と一喝したそうです~笑)。