Sayalay's Dhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。

アチャン・チャー一日一話~33,34>「穴ぼこ」&「大きな家」

タイの高僧アーチャン・チャー(92年遷化)の法話集(台湾伝承出版社)が手に入りました。P 42にこんな事が書いてあります(二話)。

#33-150621

「穴ぼこ」

《あなたがた、色々な方にお会いして、あなたがたを指導する時、私は色々な事を言いますが、矛盾している事も言います。私の指導方法は、実は非常に簡単なのです。たとえば、私はある人が全く知らないでいて、しかし、私なら何度もそこを行き来した事のある道を歩いているとして、その人がもうすぐ右側の穴ぼこに落ちそうになっているのを見た時、私は“左へ!左へ!”と叫びます。同じように、ある人が、左側の穴ぼこに落ちそうになっている時、私は“右へ!右へ!”と叫びます。言っている事は異なりますが、私は彼らに道路の同じ方向へ進むように指導しているのです。私は彼らに二つの辺を離れて、ゴータマ仏陀が教えた中道へ戻れるように教えているのです》(「森林里的一棵樹」より)

#34-150621

「大きな家」(「家」改題)

《すべての私の弟子は、私の子供のようです。あなた方に対して、私は慈悲と思いやりしか持ちません。たとえ私があなた方に苦しい思いをさせているとしても、あなた方に良かれと思っているのです。私はあなた方の中に高等教育を受けていて、博学な人たちがいる事を知っています。ただ、教育程度が高くなく、世俗の知識が多くない人の方が修行に取り組み易いのです。博学な人はまるで大きな家を所有している人のように、それを掃除して綺麗にするのは大変です。しかし、一旦、家を綺麗に片づけたなら、広くて快適な生活空間を得る事ができます。ですから、今は我慢です!忍耐力と気力は、我々の修行にとって非常に重要なのです》(「森林里的一棵樹」より)

 

ブログ主:私は若い時からテラワーダ(南伝仏教)が好きで、初期仏典系の本はよく読みましたが、大乗を含むすべての仏典を網羅して読んだ、という事はありません。識者によると、仏典の中に書かれてある事柄は、矛盾に満ちていて、時々、何が本当であるか分からなくなってしまう事があるそうです。ゴータマ仏陀は対機説法をしましたから、目の前にいるその人の短所や盲点を突くために、言葉を選んだのでしょう。たとえば、猪突猛進の人には「もっとゆっくり段階を追って」と言い、のんびり屋さんには「もっと頑張れ」という風に。現代の私たちは、仏典の中から自分に合う言葉を見つけると、ゴータマ仏陀が直接自分に語りかけてくれているようで嬉しくなるのです。

                   (翻訳文責 Pañña-adhika sayalay)