Sayalay's Dhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。

アチャン・チャー一日一話~36,37,38>「主婦」&「包丁」&「結び目」

タイの高僧アーチャン・チャー(92年遷化)の法話集(台湾伝承出版社)が手に入りました。P 44,45にこんな事が書いてあります(三話)。

#36 -150623

「主婦」

茶碗を洗う時、いつも眉間に皺を寄せている主婦のようになってはいけません。彼女は一心不乱に茶碗を綺麗に洗おうとしているけれども、しかし、自分の心が汚れている事には気が付かない!あなたは、こういう場面を見たことがありますか?彼女は、目の前の汚れた茶碗ばかりに気を取られているけれども、実際、何も見ていないのです。違いますか?私は言います“あなた方多くの人々は、みなこういう体験をしていますが、まさにこの事こそ観察されなければならないのです。普通の人は、ただ茶碗を洗う事に心を奪われ、かえって自分の心を汚しているのです。これはよくない事です。彼らは今ここにある自分を忘れているのです。(「森林里的一棵樹」より)。

#37-150623

「包丁」

どの包丁にも、切っ先、峰、柄があります。あなたが包丁を持つ時、切っ先だけを持つ事ができますか?あるいは、峰だけ持ったり、柄だけ持ったりする事ができるでしょうか?包丁の柄、峰、切っ先は、すべて一つの包丁に属しています。あなたが包丁を持つと、この三つの部分は、同時に持ち上げられる事になります。

同様の道理で、あなたが善を持ち上げると、必然的に悪もついてきます。人々はただひたすら善を追い求め、悪を放棄しようと企図しますが、彼らは非善と非悪について学ぼうとはしません。もしあなたが非善と非悪を学んだ事がないのならば、あなたは真実の知見を得る事はできません。ただ善のみを得ようとしても、悪は同時に付いてきます。たとえ楽だけを得ようとしても、苦も一緒に付随してきます。あなたの心を、善及び悪を超越するまで訓練する事、それが修行の完成です。(「森林里的一棵樹」より)

#38-150623

「結び目」

我々は、楽しさと不快は不安定であり、かつ無常なものであると観照しなければなりません。我々のあらゆる感覚は長くは続かないものであって、執着してはいけないものであると理解しなければなりません。我々はこのようにものごとを理解できるのは、我々に智慧があるからです。我々は、ものごとは、それ自身の本性に従うものだという事を理解しなければなりません。もし我々がこのような見解を持つ事ができたなら、それはまるで、我々が結んである紐の端っこを持って、その端っこを正確な方向へ引っ張るだけで、結び目は自然に緩み、ほどけて、以前より緊縛する事がないのと同じような事なのです。

これは、万事万物は、一定不変ではないという道理とよく似ています。我々は、ものごとは必ずそうあるべきであると思い込んでおり、その為に、紐の結び目は、ますます固くなっていくのです。このきつい結び目の固さは、苦痛であります。このような人生は、非常に緊張したものになります。故に我々は、結び目を少し緩めてやり、リラックスする必要があります。どうして緩める必要があるのか?それは結び目がきつすぎるからです。もし我々が執着しないなら、リラックスできます。それは永遠に一定不変のものではないからです。

我々は無常の教えを基礎にして、楽しさと不快は恒常ではなく、両者とも拠り所とはならないし、恒常なるものごとは決して存在しない事を理解します。このような認識を得たなら、我々は徐々に、我々の心の中に生まれる各種の情緒と感覚を信用しなくなり、我々がそれを信用しなくなればなるほど、誤った知見は相対的にますます減少していきます。これが、結び目をとく意義であり、このようにすれば、結び目はますます緩み、執着もそれに従って徐々に根絶されるのです。(「森林里的一棵樹」より)

 

ブログ主:私は現在、テーラワーダのメ-ティラシン(尼僧)ですが、二人の息子を育てた主婦でもありますから、#36の「主婦」には、ちょっと耳が痛い(笑)。

若い時は共働きで、育児と家事に追われ、いつも仏頂面でした(苦笑)。ヴィパサナ瞑想センターの創設者ゴエンカ師は、妊娠したら胎児と共に瞑想し、赤ちゃんが生まれたら、抱っこして一緒に瞑想しなさいと言います。確かに、胎教として瞑想はいいですし、白紙の状態の幼い子供に、心を落ち着かせる技術を教えるのは本当によい事だと思います。ただ日本では、「家族全員で瞑想しよう!」と呼びかけるのは、また別の波乱が起きそうで、痛し痒しという所でしょうか(笑)。

                     (翻訳文責 Pañña-adhika sayalay)