Sayalay's Dhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。

パオ・セヤドー問答集(仮題)>如実知見/問答(一)問1-3

 <禅修問題与解答(パオ禅師等講話)>日本語訳

(本文P028)

#003-150628

問答(一)

問1-3:安般念を修行すると、彼らの霊魂が体の外に出ていくと言う人がいます。本当にこういう事が起きますか?それとも彼らは脇道へそれてしまったのでしょうか?

答1-3:専注する心は通常、禅相を生じさせます。修行者の定力が深くて、強く、力のある時、彼の内心で生じた異なる想いに応じて、異なる禅相が出現します。たとえば、もし禅相を長くしたいと思えば、禅相は長くなります。短くなれと思えば短くなります。丸くなれと思えば丸くなるし、赤くなれと思えば赤くなります。このように、異なった思いによって、異なる禅相が生じるのです。同様にして、安般念を修する時は、どのような異なる想いでも生じる事ができます。彼はまるで自分が外に出てしまったように感じますが、それはただ心による錯覚に過ぎません。しかし、この錯覚は、霊魂によって生じたわけではありません。これは大した問題ではなく、ほっておけばいいのです。引き続き息に専注する事です。

内外の究竟名色法(paramatthanāmarūpa)を透視する事が出来たときにのみ、霊魂の問題は解決する事ができます。内外の究竟名色法を透視できるようになれば、外にも内にも、いわゆる霊魂というものを見つける事ができない(事が分かるでしょう)。究竟の名色法を透視するためには、あなたは名色法の密集を看破しなければなりません。

「Nānādhātuyo vinibbhujitva ghanavinibbhoge kate anattalakaṇaṁ yāthāvasarasato upaṭṭhāti」――「我々が密集を看破した時、無我への領悟、了解(anatta-saññā)が生まれる。密集の概念がある時、霊魂の概念が生まれる。」

色法の密集を看破するためには、先にあなたは色聚(微細な粒子)を識別しなければなりません。その後に、一粒毎の色聚の中に存在する八種類の究竟色を識別しなければなりません。色法の密集を看破できないのであれば、霊魂の概念は消失する事はありません。

同様に、もし名法の密集を看破しないのであれば、霊魂の概念は同じく消失する事がありません。たとえば、あなたの心がでたらめの妄想をする時、あなたは、その妄想している心を自己の霊魂だと思ってしまうのです。もう一つ別の例では「離行作心」(visaṅkhāragata-citta)があります。離行(visaṅkhāra)とは、行法(saṅkhāra)のない涅槃です:行法とは名色法及びそれらの因と縁を言います。涅槃は行法がありませんが、涅槃(離行)を透視するためには、心識(行法)の作用が必要です。仏陀を例にとると、涅槃を透視する心(離行作心)は阿羅漢果心(arahattaphala-citta)であり、この阿羅漢果心は心所と相応します。もしも初禅阿羅漢果心であれば、37個の名法があります。いまだ道智(magga-ñāṇa)、果智(phala-ñāṇa)と観智(vipassanā‐ñāṇa)を証していない人、または、名法の密集を看破していない人は、心を自分の霊魂だと誤解してしまいます。しかし、もしも名法の密集を看破できるならば、彼は心と心所の快速な生滅を見る事ができます。無常への領悟、了解によって無我の領悟、了解が生まれます。≪弥醯経Meghiya Sutta≫の中で、仏陀はこう言っています「Aniccasaññino Meghiya anattassaññā saṇthāti」――「無常観智が強くて力のある人にとっては、無我の観智もまたはっきりと顕現します」と。

専注する心は非常に奇妙です。たとえばあなたが安般念の似相に対して非常に十分に強い専注力がある時、あなたが似相を緬甸(ミャンマー)の大金塔(Shwedagon Pagota)に送りたいと思えば、あなたは光り輝いて目を射るほどの光芒が大金塔に向かって放たれるのを見るでしょう。同様に、あなたは自分の体の骨を身体から離れさせようと思い、かつあなたの定力が非常に強い時、あなたは骨があなたの身体から離れるのを見るでしょう。これはただ心変が現出させた映像に過ぎず、実際に発生した現象ではありません。究竟名色法に対していまだ十分な観智を得ていない人は、これを霊魂だと誤解します。実際には、これは霊魂ではなくて、心によって生まれた現象に過ぎません。(翻訳文責Pañña-adhika sayalay)

 

初めてご来訪の方へ:15年1月緬甸(ミャンマー)から日本への帰路の途中、台湾に寄りました。パオ・セヤドーの著作を頂けると聞き新北市の寺院を訪問し、上記<禅修問題与解答(パオ禅師等講述)>(中国語版)を入手しました。<パオ・セヤドー問答集(仮題)>として、毎日又は隔日、一遍ずつ翻訳して掲載する予定です(出張時除く)。「智慧の光」「如実知見」の姉妹版として、パオ・メソッドに興味のある方のご参考になれば幸いです。