南伝仏教のDhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。尚、修行については必ず経験豊富な正師について下さるようお願いします。

パオ・セヤドー講述「菩提資糧」(翻訳文)-132

決意波羅蜜について言えば、それは大悲心と方法善巧智を

基礎にして、善を行い他人を利益する事に全く動揺しない

決心の事を言うか、または、この決心をする時に

生じる心を言う。

その特徴は、菩提資量の修習への決意。

作用は、菩提資量と対立する法との対峙。

現起(=現象・結果)は菩薩行を動揺しないで修習する事。

近因は、菩提資量。

決意波羅蜜は以下のように省察される:

「もし、何らの動揺なしに布施波羅蜜等の善行を

修習するならば、敵対する煩悩に出会った時、我々は動揺なく、

安定して善を行う事ができない。もし、動揺のない事や、

安定する事がないならば、我々は善く巧みに、勇猛果敢に

善を行う事ができない。

善い巧みさと勇猛果敢が無い時、正等正覚の先決条件、

すなわち、布施波羅蜜等などを成就する事が出来ない。

ここで、私は簡単に、あなた方に、徳米亜王子の物語を説明し、

我々の菩薩が、如何にして、決意波羅蜜を修習したかを、

紹介したい。

ある時、菩薩はカーシ国の国王の王子として生まれ、

名を徳米亜と言った。

王子が生まれて一カ月の時、彼の父王は、彼を抱いて四人の

コソ泥の裁判をし、四人とも処罰を受けた。

王子は、驚きと悲嘆を感じ、心の中で「私はどうしたら、

この宮殿を抜け出せるのだろうか?」と思った。

次の日、彼が一人で白色の天蓋の下に横たわっていた時、

彼は、自分の過去世を思い出した。

彼は前の生では、33天の中の男神であった。

彼は更にもっと前の過去世を思い出してみると、前の二番目の生

では、地獄にいて8万年もの間、苦しみを受けた。

彼は、なぜ自分が地獄に落ちたのかを省察してみて、

その前の前世において、彼は20年間国王を務め、彼の父親

同じように、犯罪者の裁判をやっていた。

この事を思い出すと、彼はまたもや国王になるのかと思うと

恐れが生じた。

その時、彼の天蓋を守っていた女神は、彼の過去世においては、

彼の母親であった。

女は菩薩を抱いて言った:「坊や、怖がらなくてもいいのよ。

もし、坊やが宮殿から離れたいのであれば、口がきけない、

耳が聞こえない、全身の力が抜けた身障者の振りをしなさい。

そうすれば、坊やの願望は実現するでしょう。」

その時、王子はすぐに、そのように実行した。

その後の16年間、王子は各種の試練を経たが、自分の決意に

関しては動揺する事はなかった。

最後に父王は命令を下して言った:

「私の息子は本当に口がきけない、耳が聞こえない、

全身の力が入らない。彼を墓場に連れて行って、生き埋めに

しなさい」。

その時、一人の御者が、国王の命令によって、

徳米亜王子を墓場に連れていって、生き埋めにしようとした。

彼が地面を掘っている時、徳米亜は、自分はすでに自由の身で

あることを知り、身体を動かし、話を始めた。

このように、彼は16年という長きに亘って、色々な厳しい試練に

見舞われたが、彼はなおも、動揺しない一枚岩のように、

心が堅固であった。

彼の堅固で動揺しない決意は、非常に難度の高い決意である。

人は、徳米細王子のように全力を尽くして、動揺することなく、

決意した任務を実行して初めて、菩薩が修習する所の決意波羅蜜を

成就する事ができる。

(= )(→ )訳者。(つづく)

(<パオ・セヤドー講述「菩提資糧」>(1999年版)

中国語版→日本語 翻訳文責Pañña-adhika sayalay)