Sayalay's Dhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。

是誰庵のひとやすみ~タイの森林寺院の想い出

今、毎日「メーチ・ケーウの物語」を翻訳していますが、私のタイでの経験と重なって、なんだかほろ苦く、また、人間はなかなか変われないものなのだなぁ、と感慨深い。

メーチ・ケーウが住職アチャン・カンパンの恋愛・還俗事件の為に、生まれ故郷に戻り、一から出直す為に、女性専用の道場を作る風景は、私が35年前、初めてタイの森林寺院を訪ねて、一軒の、竹でできたクティ(小屋)を借りて、安般念の修行に取り掛かった時の体験と、非常に良く似ています。

私が寄宿したタイ西部の森林寺院も、一人の僧侶アチャン・Kが、在家の老婦人から、大きな山を丸ごと布施されたばかりの時で、私が訪ねた時はまだ、簡易的に板で打ちつけた、座禅堂兼食堂、台所があっただけで、その他には何もなかったのです(国道からお寺まで、道路もなくて、地元の軍隊が出動して、作ってくれたそうです。)

寝るための小屋(クティ)は、竹で出来ていて、長さ1.8m、幅1m、ちょうど一人が横になるか、座ることができるくらい、地面から40cmほど離れた高床式でした。

蛇もトカゲもいましたが、私は全然気になりませんでした。長年探していた、自分の好みに合う修行の場を見つけて、心底嬉しかったのを覚えています。

また不思議なことに、この時の住職さんも、アチャン・カンパンと同じく還俗、結婚しました。アチャン・カンパンのお相手は、出家した尼僧でしたが、彼は、足げく通ってくる在家の女性と恋をし、彼女の事を「私のソウルメイト」と言って、ある日、突然、秘密裏に逐電、還俗して、その後、結婚しました。

お寺にも色々あって、そこは浄土でもなんでもない。

出家者にも色々あって、業を抱えて右往左往、七転八倒しているのは、皆同じ。

人間が変わる事、変容することが如何に難しいか。

アチャン・カンパンとアチャン・Kの恋愛、還俗事件は、それをよく物語っていると思います。

自戒を込めて。