<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
《六処の縁によりて触》(Saḷāyatanapaccayā phasso)
(六処が生起するが故に、触が生起する)
触(phassa)は六種類ある。すなわち、眼触、耳触、鼻触、舌触、身触と意触である。
一切の、結生、有分、死亡、五門転向、受領、推度、確定、速行、彼所縁及び意門転向相応の触は、皆、意触と言う。
六処:ここでは、12処すべてを「六処」とする。すなわち:
1、六内処(ajjhattikāyatana):
眼処、耳処、鼻処、舌処、身処、意処。
2、六外処(bāhirāyatana):
色処、声(=音、以下同様)処、香処、味処、触処と法処(注43)。
これら内外処は、心と心所を強化せしめる道具または媒介である。
例えば:色処に属する色所縁が眼処の眼浄色を打った時、もし、その色所縁が喜ばしい所縁である時、笑顔が強化される:もし、その色所縁が喜ばしくない所縁である時、愁眉が強化される。故に、眼処と色処は、心と心所(色所縁を目標に取る眼門と意門心路過程)を強化する道具または媒介であると言う。それらは、斯くの如くに理解されるべきである。
各々の心相応の心所、特に色々な触(phassa)と相応する心所は皆、相応法処と呼ばれる。一切の識は、意処と呼ばれる。
識別方法の幾つかの例
結生意触(結生心と相応の触)
1、心所依処法処が生起するが故に、結生意触が生起する;
心所依処法処は因、結生意触は果。
2、外処(すなわち、業、業相と趣相の三者の内の一)が生起するが故に、結生意触が生起する;
外処は因、結生意触は果。
3、結生識(意処)が生起するが故に、結生意触が生起する;
結生識(意処)は因、結生意触は果。
4、相応法処(32)が生起するが故に、結生意触が生起する;
相応法処(32)が因、結生意触は果。
結生意触は名法である。(五蘊界)名法の自性に基づいて、それらは必ず、依処色の存在する状況の下でのみ生起する事ができる。
次に、触(phassa)は「接触」という自性を有するが故に、それは、目標(所縁)があって、初めて生起する事ができる。
もし、接触する目標がない時、触は生起しえない。結生名法グループの目標は業または業相または趣相である為、状況に応じて、その目標は六所縁の内のどれかの一つで有り得る。
もし、その目標が業(人として生まれるなら必ず善思である)である時、それはすなわち、善思法処である。
もし、禅修行者がその法処を指定したい(=何であるかを見極めたい)のであれば、彼は上に述べた第(2)項を以下の様に設定する:
業所縁(法処)が生起するが故に、結生意触が生起する;
業所縁(法処)は因、結生意触は果。
相応法処
喜俱三因者の結生心は、結生識と相応する 33個の心所がある。
それらの中で、触は結生意触である。
33心所から果に属する触を除くと、32の心所がある事になる。
これらの心所は法処、(+すなわち)相応法処である。
結生識はすなわち、意処である。
一項毎の分析方法もまた角の如くである事に注意する事。
結生意触を識別する方法に基づいて、次は、有分意触と死亡意触を識別する。
五門転向意触(色所縁グループ)
1、心所依処(法処)が生起するが故に、五門転向意触が生起する;
心所依処(法処)は因、五門転向意触は果。
2、色処(色所縁)が生起するが故に、五門転向意触が生起する;
色処(色所縁)は因、五門転向意触は果。
3、五門転向意処が生起するが故に、五門転向意触が生起する;
五門転向意処は因、五門転向意触は果。
4、相応法処(9)が生起するが故に、五門転向意触が生起する;
相応法処(9)は因、五門転向意触は果。
註:次の説明は短縮形である。一切の識別方法は、上に述べた如くである事を理解しなければならない。
眼触=眼識と相応する触
1、眼処(眼処依処)が生起するが故に、眼触が生起する。
2、色処(色所縁)が生起するが故に、眼触が生起する。
3、眼識意処が生起するが故に、眼触が生起する。
4、相応法処(6)が生起するが故に、眼触が生起する。
受領意触(色所縁グループ)
1、心所依処(法処)が生起するが故に、受領意触が生起する。
2、色処が生起するが故に、受領意触が生起する。
3、受領意処が生起するが故に、受領意触が生起する。
4、相応法処(9)が生起するが故に、受領意触が生起する。
推度意触(色所縁グループ)
1、心所依処(法処)が生起するが故に、推度意触が生起する。
2、色処が生起するが故に、推度意触が生起する。
3、推度意処が生起するが故に、推度意触が生起する。
4、相応法処(9または10)が生起するが故に、推度意触が生起する。
確定意触(色所縁グループ)
1、心所依処(法処)が生起するが故に、確定意触が生起する。
2、色処が生起するが故に、確定意触が生起する。
3、確定意処が生起するが故に、確定意触が生起する。
4、相応法処(10)が生起するが故に、確定意触が生起する。
第一速行意触(色所縁グループ:善速行)
1、心所依処(法処)が生起するが故に、第一速行意触が生起する。
2、色処が生起するが故に、第一速行意触が生起する。
3、第一速行意処が生起するが故に、第一速行意触が生起する。
4、相応法処(32)が生起するが故に、第一速行意触が生起する。
この方法に基づいて、善と不善速行心路過程の、七個すべての速行を識別する。
第一彼所縁意触(色所縁グループ)
1、心所依処(法処)が生起するが故に、第一彼所縁意触が生起する。
2、色処が生起するが故に、第一彼所縁意触が生起する。
3、第一彼所縁意処が生起するが故に、第一彼所縁意触が生起する。
4、相応法処(32)が生起するが故に、第一彼所縁意触が生起する。
この方法に基づいて、状況によって生起する所の、その他の大果報彼所縁または無因善果報彼所縁、または不善果報彼所縁を識別する。
それらの差異は、相応法処の心所の数のみによる。
意門転向意触(色所縁を目標に取る)
1、心所依処(法処)が生起するが故に、意門転向意触が生起する。
2、色処が生起するが故に、意門転向意触が生起する。
3、意門転向意処が生起するが故に、意門転向意触が生起する。
4、相応法処(10)が生起するが故に、意門転向意触が生起する。
註:色所縁グループのすべての善と不善速行心路過程を識別する。
推度、速行と彼所縁の心所の数は、状況によって変更があるが、それらの中から触を取り除き、残りのものを「相応法処」とする。
耳門心路過程等との唯一の差異は:
「色処」を「声処=声所縁」等に変更する事である。
同様の方法を用いて、識別する。
確定、速行、五門転向と意門転向は、果報輪転に属さないものの、しかし、如何なる究極法も取りこぼさないという意味において、それらもまた識別する。
もし、前生五門転向が無いならば、五門心路過程の五識、受領、推度と彼所縁名蘊は生起することができない。
意門心路過程の彼所縁は、もし、意門転向が無い場合、それもまた生起することができない。
彼所縁は、必ずや、速行の後にのみ、生起することができる。
もし、確定が無いならば、五門速行は、決して生起する事はない;
もし、意門転向が無いならば、意門速行もまた、決して生起する事はない。
こうしたことから、果報名法に属する五識、受領、推度と彼所縁が生起するならば、転向、確定と速行もまた、自然に生起することができる。
故に、禅修行者は、果報名法を識別する時、もし、彼が如何なる究極法も取りこぼさないという意味において、転向、確定と速行を識別するならば、それに問題はない。
法処は四種類ある:
1、16微細色。
2、52心所すべて。
3、涅槃。
4、概念。例えば白遍、安般似相などなど。
五浄色と七境色(注44)以外、その他の16色は微細色(28-12=16)である。この 16の微細色の中においては、心所依処も含まれる為、それは法処に属するのである。
注43:《智慧の光》では、眼処、耳処、鼻処、舌処と身処のそれぞれを、眼浄色、耳浄色、鼻浄色、舌浄色、身浄色とする:意処は、一切の識であり、色処、声処、香処、味処と触処は色塵、声塵、香塵、味塵と触塵とする:その他の色法、一切心所、概念法と涅槃は、法処に属する。
注44:《智慧の光》では、七境色(gocara rūpa)は、色彩、声、香、地、火と風(触=地、火、風)とする。
(10-20につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は<菩提樹文庫>までお知らせ下さい。http://bodaijubunko.sakura.ne.jp/index.html
<本雅難陀尊者(Ven. U Puññānanda)著 『禅修指南』Meditation Guide 第二版 中国語→日本語 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>