南伝仏教のDhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。尚、修行については必ず経験豊富な正師について下さるようお願いします。

翻訳『禅修指南』10-19(295/520)

<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>

《六処の縁によりて触》(Saḷāyatanapaccayā  phasso)

(六処が生起するが故に、触が生起する)

触(phassa)は六種類ある。すなわち、眼触、耳触、鼻触、舌触、身触と意触である。

一切の、結生、有分、死亡、五門転向、受領、推度、確定、速行、彼所縁及び意門転向相応の触は、皆、意触と言う。

六処:ここでは、12処すべてを「六処」とする。すなわち:

1、六内処(ajjhattikāyatana):

眼処、耳処、鼻処、舌処、身処、意処。

2、六外処(bāhirāyatana):

色処、声(=音、以下同様)処、香処、味処、触処と法処(注43)。

これら内外処は、心と心所を強化せしめる道具または媒介である。

例えば:色処に属する色所縁が眼処の眼浄色を打った時、もし、その色所縁が喜ばしい所縁である時、笑顔が強化される:もし、その色所縁が喜ばしくない所縁である時、愁眉が強化される。故に、眼処と色処は、心と心所(色所縁を目標に取る眼門と意門心路過程)を強化する道具または媒介であると言う。それらは、斯くの如くに理解されるべきである。

各々の心相応の心所、特に色々な触(phassa)と相応する心所は皆、相応法処と呼ばれる。一切の識は、意処と呼ばれる。

 

識別方法の幾つかの例

結生意触(結生心と相応の触)

1、心所依処法処が生起するが故に、結生意触が生起する;

心所依処法処は因、結生意触は果。

2、外処(すなわち、業、業相と趣相の三者の内の一)が生起するが故に、結生意触が生起する;

外処は因、結生意触は果。

3、結生識(意処)が生起するが故に、結生意触が生起する;

結生識(意処)は因、結生意触は果。

4、相応法処(32)が生起するが故に、結生意触が生起する;

相応法処(32)が因、結生意触は果。

 

結生意触は名法である。(五蘊界)名法の自性に基づいて、それらは必ず、依処色の存在する状況の下でのみ生起する事ができる。

次に、触(phassa)は「接触」という自性を有するが故に、それは、目標(所縁)があって、初めて生起する事ができる。

もし、接触する目標がない時、触は生起しえない。結生名法グループの目標は業または業相または趣相である為、状況に応じて、その目標は六所縁の内のどれかの一つで有り得る。

もし、その目標が業(人として生まれるなら必ず善思である)である時、それはすなわち、善思法処である。

もし、禅修行者がその法処を指定したい(=何であるかを見極めたい)のであれば、彼は上に述べた第(2)項を以下の様に設定する:

業所縁(法処)が生起するが故に、結生意触が生起する;

業所縁(法処)は因、結生意触は果。

相応法処

喜俱三因者の結生心は、結生識と相応する 33個の心所がある。

それらの中で、触は結生意触である。

33心所から果に属する触を除くと、32の心所がある事になる。

これらの心所は法処、(+すなわち)相応法処である。

結生識はすなわち、意処である。

一項毎の分析方法もまた角の如くである事に注意する事。

結生意触を識別する方法に基づいて、次は、有分意触と死亡意触を識別する。

五門転向意触(色所縁グループ)

1、心所依処(法処)が生起するが故に、五門転向意触が生起する;

心所依処(法処)は因、五門転向意触は果。

2、色処(色所縁)が生起するが故に、五門転向意触が生起する;

色処(色所縁)は因、五門転向意触は果。

3、五門転向意処が生起するが故に、五門転向意触が生起する;

五門転向意処は因、五門転向意触は果。

4、相応法処(9)が生起するが故に、五門転向意触が生起する;

相応法処(9)は因、五門転向意触は果。

註:次の説明は短縮形である。一切の識別方法は、上に述べた如くである事を理解しなければならない。

眼触=眼識と相応する触

1、眼処(眼処依処)が生起するが故に、眼触が生起する。

2、色処(色所縁)が生起するが故に、眼触が生起する。

3、眼識意処が生起するが故に、眼触が生起する。

4、相応法処(6)が生起するが故に、眼触が生起する。

 

受領意触(色所縁グループ)

1、心所依処(法処)が生起するが故に、受領意触が生起する。

2、色処が生起するが故に、受領意触が生起する。

3、受領意処が生起するが故に、受領意触が生起する。

4、相応法処(9)が生起するが故に、受領意触が生起する。

推度意触(色所縁グループ)

1、心所依処(法処)が生起するが故に、推度意触が生起する。

2、色処が生起するが故に、推度意触が生起する。

3、推度意処が生起するが故に、推度意触が生起する。

4、相応法処(9または10)が生起するが故に、推度意触が生起する。

 

確定意触(色所縁グループ)

1、心所依処(法処)が生起するが故に、確定意触が生起する。

2、色処が生起するが故に、確定意触が生起する。

3、確定意処が生起するが故に、確定意触が生起する。

4、相応法処(10)が生起するが故に、確定意触が生起する。

 

第一速行意触(色所縁グループ:善速行)

1、心所依処(法処)が生起するが故に、第一速行意触が生起する。

2、色処が生起するが故に、第一速行意触が生起する。

3、第一速行意処が生起するが故に、第一速行意触が生起する。

4、相応法処(32)が生起するが故に、第一速行意触が生起する。

この方法に基づいて、善と不善速行心路過程の、七個すべての速行を識別する。

 

第一彼所縁意触(色所縁グループ)

1、心所依処(法処)が生起するが故に、第一彼所縁意触が生起する。

2、色処が生起するが故に、第一彼所縁意触が生起する。

3、第一彼所縁意処が生起するが故に、第一彼所縁意触が生起する。

4、相応法処(32)が生起するが故に、第一彼所縁意触が生起する。

この方法に基づいて、状況によって生起する所の、その他の大果報彼所縁または無因善果報彼所縁、または不善果報彼所縁を識別する。

それらの差異は、相応法処の心所の数のみによる。

意門転向意触(色所縁を目標に取る)

1、心所依処(法処)が生起するが故に、意門転向意触が生起する。

2、色処が生起するが故に、意門転向意触が生起する。

3、意門転向意処が生起するが故に、意門転向意触が生起する。

4、相応法処(10)が生起するが故に、意門転向意触が生起する。

註:色所縁グループのすべての善と不善速行心路過程を識別する。

推度、速行と彼所縁の心所の数は、状況によって変更があるが、それらの中から触を取り除き、残りのものを「相応法処」とする。

耳門心路過程等との唯一の差異は:

「色処」を「声処=声所縁」等に変更する事である。

同様の方法を用いて、識別する。

確定、速行、五門転向と意門転向は、果報輪転に属さないものの、しかし、如何なる究極法も取りこぼさないという意味において、それらもまた識別する。

もし、前生五門転向が無いならば、五門心路過程の五識、受領、推度と彼所縁名蘊は生起することができない。

意門心路過程の彼所縁は、もし、意門転向が無い場合、それもまた生起することができない。

彼所縁は、必ずや、速行の後にのみ、生起することができる。

もし、確定が無いならば、五門速行は、決して生起する事はない;

もし、意門転向が無いならば、意門速行もまた、決して生起する事はない。

こうしたことから、果報名法に属する五識、受領、推度と彼所縁が生起するならば、転向、確定と速行もまた、自然に生起することができる。

故に、禅修行者は、果報名法を識別する時、もし、彼が如何なる究極法も取りこぼさないという意味において、転向、確定と速行を識別するならば、それに問題はない。

法処は四種類ある:

1、16微細色。

2、52心所すべて。

3、涅槃。

4、概念。例えば白遍、安般似相などなど。

五浄色と七境色(注44)以外、その他の16色は微細色(28-12=16)である。この 16の微細色の中においては、心所依処も含まれる為、それは法処に属するのである。

注43:《智慧の光》では、眼処、耳処、鼻処、舌処と身処のそれぞれを、眼浄色、耳浄色、鼻浄色、舌浄色、身浄色とする:意処は、一切の識であり、色処、声処、香処、味処と触処は色塵、声塵、香塵、味塵と触塵とする:その他の色法、一切心所、概念法と涅槃は、法処に属する。

注44:《智慧の光》では、七境色(gocara rūpa)は、色彩、声、香、地、火と風(触=地、火、風)とする。

(10-20につづく)

<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>

(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は<菩提樹文庫>までお知らせ下さい。http://bodaijubunko.sakura.ne.jp/index.html

<本雅難陀尊者(Ven. U Puññānanda)著 『禅修指南』Meditation Guide 第二版  中国語→日本語 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>