<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
《識蘊品》
(一)識蘊(viññāṇakkhandha)
相:目標(所縁)を識知する事;目標を「持つ(=保持する)」事。
作用:目標を識知する事を先導する。
現起(現象):名相続流が中断しない様に、後生心と連接する。
近因:名色(無色界ではただ名だけが存在する)
(二)結生心(paṭisandhi citta)
相:前世の臨終速行の目標を識知するかまたは、それを目標に取る。すなわち、業または業相または趣相。
作用:二世を連結する。すなわち、前世と後世の名相続流を連結する。
現起(現象):二世の連結。すなわち、前世と後世の名相続の連結。
近因:心所と依処色に相応する。
(三)有分心(bhavaṅga citta)
相:前世の臨終速行の目標を識知する、またはそれを目標に取る。すなわち、業または業相または趣相。
作用:有(その意はすなわち、生命)の因。一期の生命の中の前後に、名相続流が中断しない様にする。
現起(現象):心路過程を連結する。心路過程の間に間断がない様にする。
近因:心所と依処色に相応する。
(四)五門転向:唯作意界(pañcadvārāvajjana=kiriya manodhātu)
相:色所縁などの目標を、識知するかまたはそれを目標に取る。
眼識などの五識の前に生起する。
作用:一つの所縁に注意を払うかまたは省察する。言い換えれば、すなわち、古い目標、すなわち、有分心の目標を捨棄して、もう一つ別の心境に転換する。
現起(現象):目標に対面する(たとえば、色所縁)。
近因:有分断。
五門転向は、同時にすべての五所縁を識知する事はできない。故に、禅修行の時、禅修行者はそれぞれを個別に識別しなければならない。
すなわち、
1、色所縁を目標に取る転向の相、作用、現起(現象)と近因。
2、声所縁を目標に取る転向の相、作用、現起(現象)と近因。
3、香所縁を目標に取る転向の相、作用、現起(現象)と近因。
4、味所縁を目標に取る転向の相、作用、現起(現象)と近因。
5、触所縁を目標に取る転向の相、作用、現起(現象)と近因。
(五)眼識(cakkhu viññāṇa)
相:色所縁を目標として識知するかまたはそれを所縁に取る;
眼所依処に依存して生起する。
作用:ただ色所縁を目標として識知するかまたはそれを目標として取る。
現起(現象):色所縁に対面する。
近因:色所縁を目標に取る五門転向心の滅尽。
(六)耳識(sota viññāṇa)
相:声所縁を目標として識知するかまたはそれを所縁に取る;
耳所依処に依存して生起する。
作用:ただ声所縁を目標として識知するかまたはそれを目標として取る。
現起(現象):声所縁に対面する。
近因:声所縁を目標に取る五門転向心の滅尽。
(七)鼻識(ghāna viññāṇa)
相:香所縁を目標として識知するかまたはそれを所縁に取る;
鼻所依処に依存して生起する。
作用:ただ香所縁を目標として識知するかまたはそれを目標として取る。
現起(現象):香所縁に対面する。
近因:香所縁を目標に取る五門転向心の滅尽。
(八)舌識(jivhā viññāṇa)
相:味所縁を目標として識知するかまたはそれを所縁に取る;
舌所依処に依存して生起する。
作用:ただ味所縁を目標として識知するかまたはそれを目標として取る。
現起(現象):味所縁に対面する。
近因:味所縁を目標に取る五門転向心の滅尽。
(九)身識(kāya viññāṇa)
相:触所縁を目標として識知するかまたはそれを所縁に取る;
身所依処に依存して生起する。
作用:ただ触所縁を目標として識知するかまたはそれを目標として取る。
現起(現象):触所縁に対面する。
近因:触所縁を目標に取る五門転向心の滅尽。
(十)受領(sampaṭiccana)
(眼門心路過程の受領を例に説明する)
相:色所縁を目標にして識知するかまたはそれを目標に取る。眼識の後に生起する。
作用:色所縁を受領する。
現起(現象):色所縁の状態を受領する。
近因:眼識の滅尽。
受領は、同一の心識刹那の中において、すべての五所縁を識知するのではない為、禅修行の時、禅修行者は、各々、その他の異なった所縁を目標に取る受領を識別しなければならない。すなわち:
1、耳門心路過程の中において、声所縁を目標に取る受領の相、作用、現起(現象)と近因。
2、鼻門心路過程の中において、香所縁を目標に取る受領の相、作用、現起(現象)と近因。
3、舌門心路過程の中において、味所縁を目標に取る受領の相、作用、現起(現象)と近因。
4、身門心路過程の中において、触所縁を目標に取る受領の相、作用、現起(現象)と近因。
(11)推度(santīraṇa):無因果報意識界
相:六所縁を識知するかまたはそれを目標に取る。(注45)
作用:目標を推度または審察する。
現起(現象):目標の状態を推度(=推定)する。
近因:心所依処。
禅修行者は、それぞれに、異なった所縁を目標に取る推度を識別しなければならない。すなわち:
1、色所縁を目標に取る推度の相、作用、現起(現象)と近因。
2、声所縁を目標に取る推度の相、作用、現起(現象)と近因。
3、香所縁を目標に取る推度の相、作用、現起(現象)と近因。
4、味所縁を目標に取る推度の相、作用、現起(現象)と近因。
5、触所縁を目標に取る推度の相、作用、現起(現象)と近因。
6、法所縁を目標に取る推度の相、作用、現起(現象)と近因。
(12)確定:通一切唯作意識界
(vottapana=sādhāraṇa kiriya manoviññāṇadhātu)
相:六所縁の目標を識知するかそれを目標に取る。(注46)
作用:五門の目標を確定する;意門の目標を省察する。
現起(現象):五門の目標の状態を確定する;意門の目標の状態を省察する。
近因:五門無因果報意識界(すなわち、推度)の滅尽;意門有分の滅尽。
眼門心路過程の確定
相:色所縁を目標として、それを識知するかまたはそれを目標に取る。
作用:色所縁を喜ばしいものか、喜ばしくないものかなど等と確定する。
現起(現象):色所縁の状態を確定する。
近因:推度心の滅尽。
禅修行者は、各々の、その他の所縁を目標に取る確定について、識別しなければならない。すなわち;
1、耳門心路過程の中において、声所縁を目標に取る確定の相、作用、現起(現象)と近因。
2、鼻門心路過程の中において、香所縁を目標に取る確定の相、作用、現起(現象)と近因。
3、舌門心路過程の中において、味所縁を目標に取る確定の相、作用、現起(現象)と近因。
4、身門心路過程の中において、触所縁を目標に取る確定の相、作用、現起(現象)と近因。
(意門心路過程の意門転向に関しては後に説明する)
(13)一、速行(善速行)[javana(kusala javana)]
相:叱責されない;善果がある。
作用:不善を破る。
現起(現象):清浄な状態。
近因:如理作意。
または、それは、叱責されるべき不善と対抗するが故に;
相:叱責されない。
作用:清浄。
現起(現象):よい果報がある。
近因:如理作意。
(13)二、速行(不善速行)[javana(akusala javana)]
相:叱責されるべき;悪果あり。
作用:無益;悪果を齎す。
現起(現象):心の汚染がある状態。
近因:不如理作意。
または、不善法は確実に叱責されるべきであるが故に、
相:叱責を受ける。
作用:心の汚染がある状態。
現起(現象):苦の悪果がある。
近因:不如理作意。
(14)彼所縁(tadārammaṇa)
(眼門心路過程を例に説明する)
相:色所縁を目標として識知するかまたはそれを目標に取る。
作用:速行の目標を目標に取る。
現起(現象):速行の目標を目標に取る状態。
近因:速行の滅尽。
禅修行者は各々、耳門、鼻門、舌門、身門と意門心路過程の彼所縁の相、作用、現起(現象)と近因を識別しなければならない。
(15)意門転向(意門心路過程)
[manodvārāvajjana(manodvāra vīthi)]
すなわち、捨俱無因唯作意識界
相:六所縁を目標としてそれを識知するか、それを目標に取る。
作用:意門に出現した目標を省察する。
現起(現象):意門に出現した目標の状態を省察する。
近因:有分断。
禅修行者は各々、異なった所縁を目標に取る意門転向を識別しなければならない。すなわち;
1、色所縁を目標に取る意門転向の相、作用、現起(現象)と近因。
2、声所縁を目標に取る意門転向の相、作用、現起(現象)と近因。
3、香所縁を目標に取る意門転向の相、作用、現起(現象)と近因。
4、味所縁を目標に取る意門転向の相、作用、現起(現象)と近因。
5、触所縁を目標に取る意門転向の相、作用、現起(現象)と近因。
6、法所縁を目標に取る意門転向の相、作用、現起(現象)と近因。
(16)(阿羅漢)生笑心(hasituppāda citta)
相:六所縁を目標として識知するかまたはそれを目標に取る。
作用:功用を通して、阿羅漢をして、非殊勝な目標(たとえば、白骨鬼)に対して微笑する。
現起(現象):微笑の状態に至る。
近因:心所依処。
註:この心は、ただ阿羅漢の心中にのみ生起する。故に、阿羅漢だけがそれを識別する事ができる。
(17)死亡心(cuti citta)
相:前世臨終速行の目標を目標として取るか、または識知する。すなわち、業または業相または趣相。
作用:転生。
現起(現象):転生の状態。
近因:1、もし、死亡心が速行の後に生起したならば、その近因は、速行の滅尽である。
2、もし、死亡心が、彼所縁の後に生起したならば、その近因は、彼所縁の滅尽である。
3、もし、死亡心が、有分の後に生起したならば、その近因は、有分の滅尽である。
注45:《智慧の光》では、推度心とは、三種類の無因果報意識界の一と言う。それは、心路過程の中の推度と彼所縁のおいて出現する事ができるし、また、結生、有分と死亡の三離路心に出現する事もできる(+と言う)。故に、それは法所縁を目標に取る事もできる。
注46:《智慧の光》では、この確定は、「意門転向心」であるとする。「意門転向心」は、五門心路過程の中の確定、及び意門心路過程の中の意門転向に出現する事ができる。故に、それはすべての六所縁を目標に取る事もできる。
(12-4につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は<菩提樹文庫>までお知らせ下さい。http://bodaijubunko.sakura.ne.jp/index.html
<本雅難陀尊者(Ven. U Puññānanda)著 『禅修指南』Meditation Guide 第二版 中国語→日本語 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>