<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
《受蘊品》
(一)楽受(sukha vedanā)
相:喜ばしい所縁を体験する。
作用:相応の法を増長する。
現起(現象):身体の愉楽。
近因:身根、すなわち、身浄色。
(二)苦受(dukkha vidanā)
相:喜ばしくない所縁を体験する。
作用:相応の法が弱まる。
現起(現象):身体が痛苦に遭遇する状態。
近因:身根、すなわち、身浄色。
(三)悦受(somanassa vedanā)
相:自性(sabhāva)の喜ばしさを体験するまたは喜ばしい所縁を造作(parikappa)するに至る。
作用:自性または造作を通して、喜ばしい所縁を体験する。
現起(現象):心内が愉悦の状態。
近因:心と心所の軽安。
註:自性の喜ばしい所縁の本性は、喜ばしいものである。喜ばしい所縁を造作するに至るとは、すなわち、造作を通してようやく喜ばしさに変化することを言う。例えば自性が喜ばしくない魚醤も、煮炊きすれば喜ばしいものに変化する、等。
悦受のもう一つ別の定義:
相:衆生をして、相応する法において、所縁を楽しむ。
作用:相応の法が増長する。
現起(現象):心内の愉悦。
近因:心と心所の軽安。
註:二番目の定義は、特に、刹那定、遍作定、近行定、安止定、観智相応の悦受(すなわち、心の楽受)を言う。一番目の定義は、一切の悦受に適応するが、しかし、貪根悦受の近因は、軽安では有り得ず、依処、所縁、相応法の三者の一である。
(四)憂受(domanassa vedanā)
相:自性の喜ばしくない様を体験するかまたは喜ばしくない所縁に至るべく造作する。
作用:自性の喜ばしくない様を体験するかまたは、喜ばしくない所縁を造作するに至る状態。
現起(現象):心内において痛苦に遭う。
近因:心所依処。
註:喜ばしくない自性の所縁を体験して、喜ばしくないのは憂受である。外道は、自性において非常に喜ばしい所縁(たとえば、仏陀)を喜ばしくないと見做すが、これは喜ばしくない所縁に至る造作である。
外道の邪見と邪思惟によって、喜ばしい所縁が、喜ばしくない所縁に変化したのである。造作を通して、所縁を喜ばしくないものとして体験するのは憂受である。
(五)捨受(upekkhā vedanā)
相:自性の中捨を体験する事、または中捨に至る所縁を造作する事。
作用:あまり増長がない、または相応法の減弱。
現起(現象):平静な状態。
近因:喜(pīti)の心がない、すなわち、喜不相応の心。
禅捨=第三禅相応の中捨性(jhānupekkhā=tatramajjhattatā)
相:中捨。
作用:殊勝なる楽であるが、相手にしない。
現起(現象):殊勝なる楽に対して中捨を保つ。言い換えれば、それは相応する法が、殊勝なる楽に対して、中捨を保つ事。
近因:喜(pīti)を厭離する、すなわち、喜を制御する。
不苦不楽=捨受=第四禅の捨
相:喜ばしい所縁と喜ばしくない所縁に相反する、中程度の喜ばしい所縁を体験する。
作用:中捨に留まる。
現起(現象):顕著でない受。
近因:楽が去る、すなわち、無楽の第四禅の近行。
《想蘊品》
想心所(saññā cetasika)
相:心の中で、標記または記号を記し、目標の間の違いを知る。例えば<褐色」「金色」等々。
作用:1、以前実施した標記を通して、同じ所縁を認める。
2、記号を知る。心をして、今後、再度、「これはあれである」と認めせしめる。(例えば、大工が板の上に印をつける様に)。
現起(現象):1、心所が記号に注意を向ける;当該の記号または相に基づいて、目標に注意を向ける。
2、深く入らずに目標を取る;目標を長い時間取る事がない。
近因:目標の顕現。(たとえば、鹿が草でできた案山子を見る時、それを「人」だと思うなど)。
《行蘊品》
通一切心心所
(sabba citta sdhāraṇa cetasika)
(5+受+想=7)
(一)触(phassa)
相:目標と接触する。
作用:目標と識との接触。
現起(現象):1、依処、目標と識が集合して生起する。
2、受を生起せしめる。
近因:諸々の識の門に出現する境。
(二)思(cetanā)
相:相応の法を目標に向かう様に促すかまたは発動する。
作用:集合(相応の法が散乱しない様にする)。
現起(現象):指導。
近因:1、依処。
2、目標。
3、触から作意までの最も顕著な相応法。
(三)一境性(ekaggatā)=定(samādhi)
相:1、首領としての役割。
2、目標において安定する事というのも、、散乱しない事。
3、相応の法が目標に対して散乱しない因。
作用:俱生法の統一。
現起(現象):1、平静;寂止。
2、智(果)が生起する因。
近因:(多くの)楽受。
(四)命根(jīvita)
相:相応の名法の維持。
作用:俱生名法をして、生起から壊滅の間、存在せしめる。
現起(現象):俱生名法の存在を、壊滅まで維持する。
近因:維持されるべき名法。
(五)作意(namasikāra)
相:相応の法あ目標に向かう様に、「押す」かまたは指揮する。
作用:相応の法と目標を連結する。
現起(現象):目標に対面する。
近因:目標。
六雑心所(pakiṇṇaka cetasika)
(一)尋(vitakka)
相:心をして、目標に向けせしめる。
作用:目標に対して全面的に打つ(=ぶつかる)。
現起(現象):心をして目標に向かわせる。
近因:目標(または目標+依処+触)
(二)伺(vicāra)
相:繰り返し目標を省察する。
作用:繰り返し相応の名法を、目標として置く。
現起(現象):心を目標に留める。
近因:目標(または目標+依処+触)
(三)勝解(adhimokkh)
相:目標の確定。
作用:目標への猶予の対治。
現起(現象):確定または決定。
近因:もう一つ別の選択するべき目標。
(四)精進(vīriya)
相:対面しているどの様な苦にも、努力または忍耐する。
作用:相応の名法を支持するまたは安定させる。
現起(現象):放棄しない。
近因:1、悚懼智(saṁvega ñāṇa)《増支部・一集》において、仏陀は以下の様に言う「悚懼智を有する者は、正確に精進する事ができる。」
2、精進する事
悚懼智
1、生(=生まれる事)の厄難、すなわち、結生が生起した時の苦難。
2、老の厄難、すなわち、老いる苦難。
3、病気の苦。4、死の苦。5、悪趣に堕ちる苦。
6、過去の生死輪廻を基因とする苦。
7、未来の生死輪廻を基因とする苦。
8、食を求める苦、すなわち、今世において、食と富を求める苦。
この8項目を省察する時、愧と相応しつつ生起する所の智は、俱愧智(sahottappa ñāṇa)であり、又の名を「悚懼」とする。
この悚懼智を擁する者の多くは、非常に熱心に、善の修習、布施、持戒、禅修などなどに精進する。故に、悚懼智は、精進に導く近因である。
精進事(vīriyārambha vatthu)
1、遠くに行く前。
2、遠くに行った後。
3、仕事の前。
4、仕事の後。
5、病気の時。
6、病気が治った後。
7、充分な食べ物が得られない時。
8、多くの食べ物を得た時。
ひとたび、上の8項目が発生した時に、もし、如理作意省察智(yoniso manasikāra paccevekkhaṇa ñāṇa)があるならば、それは精進の因となる。それ所以に、精進事と言う。
(五)喜(pīti)
相:目標を好む。
作用:1、身体と心をして喜悦せしめる。
2、勝心生色を全身に散布する。
現起(現象):身体と心の喜悦。
近因: 目標(または目標+依処+触)
(六)欲(chanda)
相:欲作(=欲的行為)。
作用:目標を探す。
現起(現象):目標を必要とする:目標を求める。
近因:求める所の目標。
(12-5につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は<菩提樹文庫>までお知らせ下さい。http://bodaijubunko.sakura.ne.jp/index.html
<本雅難陀尊者(Ven. U Puññānanda)著 『禅修指南』Meditation Guide 第二版 中国語→日本語 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>