翻訳『禅修指南』12-5(360/520)
<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
《14不善心所》
(一)痴(moha)
相:1、心の盲目;究極法の真実性を如実に知見する方法を持たない。
2、あるいは、無智、すなわち、究極法の真実性を徹底的に知見することができない。
作用:1、究極法の真実性を徹底的に知見することができない。
2、究極法の真実性の隠蔽。
現起(現象):1、間違った修行への誤導、または正確な修行をしない。
2、慧眼が盲目になる。
近因:不如理作意、すなわち、目標(究極法)を常、楽、我、浄などと作意する。
(二)無愧(ahirika)
相:悪行を嫌悪しない。または悪行に恥じない。
作用:悪を恥を伴わずに行う。
現起(現象):悪を造(ナ)すにおいて、退かない。
近因:己自身を尊重しない。
(三)無慙(anottappa)
相:悪行を恐れない。
作用:懼れなしに悪をなす。
現起(現象):諸々の悪を避けない。
近因:他人を尊重しない。
(四)掉挙(uddjacca)
相:心が平安でない(たとえば、風で漣が起こる水の様である)
作用:心が安定しない(たとえば、風に吹かれた旗の様である)
現起(現象):混乱。
近因:散乱する心に対して、不如理作意を起す。
(五)貪(lobha)
相:目標を「私の」と執着する。
作用:目標に粘着する。
現起(現象):目標を捨棄できない。
近因:諸々の結の法は、楽の味がすると思う。
(六)邪見(diṭṭhi)
相:究極法を常、楽、我、浄であると、間違って作意する。
作用:究極法を常、楽、我、浄であると、錯覚する。
現起(現象):究極法を常、楽、我、浄であると間違って理解する。
近因:聖者に会いたくない、たとえば、仏等々。
(七)慢(māna)
相:驕慢。
作用:己を高くする;「称賛」「奉る」に相応する名法。
現起(現象):自我(=エゴ)の顕示。
近因:見に不相応の貪。
(八)瞋(dosa)
相:粗野。
作用:
1、(毒蛇の毒に当った様な苦であり)己自身抗い、顛倒する。
2、または(毒蛇の毒に当った様な苦であり)身体の抗いと顛倒。
3、(瞋の)心所依処または身・心を怒りで焼く;たとえば、森林の大火の如く。
現起(現象):身・心の破壊;または己と他人の利益の破壊。
近因:9 または 10種類の瞋恚の事柄(āghātavatthu)
9 または 10種類の瞋恚の事柄
1、「過去において、彼は私に不利益を齎した」と思う時、怒りを覚える。2、「現在、彼は私に不利益を齎しつつある」と思う時、怒りを覚える。3、「未来において、彼は私に不利益を齎すであろう」と思う時、怒りを覚える。
4、「過去において、彼は私の愛する人に不利益を齎した」と思う時、怒りを覚える。
5、「現在、彼は私の愛する人に不利益を齎しつつある」と思う時、怒りを覚える。
6、「未来において、彼は私の愛する人に不利益を齎すであろう」と思う時、怒りを覚える。
7、「過去において、彼は私の敵に利益を齎した」と思う時、怒りを覚える。
8、「現在、彼は私の敵に利益を齎しつつある」と思う時、怒りを覚える。9、「未来において、彼は私の敵に利益を齎すであろう」と思う時、怒りを覚える。
10、怒りを覚える必要のない事柄に対して、怒りを覚える、すなわち、無理の怒り(aṭṭhānakopa)。
無理の怒りとはすなわち、何等の理由もなく怒る事である。《主張義註》では、瞋行者(sosacirita)について、言及している。
1、「雨が降る」と言って、怒る。
2、「雨が降らない」と言って、怒る。
3、「天気が熱い」と言って、怒る。
4、「天気が熱くない」と言って、怒る。
5、「風が吹いた」と言って、怒る。
6、「風が吹かない」と言って、怒る。
7、掃除をしたくないので、地面に落ちている落ち葉に怒る。
8、風が吹いて、己の着る袈裟が乱れたと言って、怒る。
9、不注意で、切り株に躓いた時、切り株に対して怒る。
《根本疏鈔》(Mūḷaṭīkā)は、別の9種類の<無理な>怒りに言及している。
1、「過去において、彼は一度も私に利益を齎した事がない」と言って、怒る。
2、「現在、彼は一度も私に利益を齎さない」と言って、怒る。
3、「未来において、彼は一度も私に利益を齎さないであろう」と言って、怒る。
4、「過去において、彼は一度も私の愛する人に利益を齎した事がない」と言って、怒る。
5、「現在、彼は一度も私の愛する人に利益を齎さない」と言って、怒る。
6、「未来において、彼は一度も私の愛する人に利益を齎さないであろう」と言って、怒る。
7、「過去において、彼は私の敵に損失を与えたことがない」と言って、怒る。
8、「現在、彼は私の敵に損失を与えない」と言って、怒る。
9、「未来において、彼は私の敵に損失を与えないであろう」と言って、怒る。
(九)嫉妬(issā)
相:作用:現起(現象):近因:
(10)慳(maccariya)
相:作用:現起(現象):近因:
(11)後悔(悪作、kukkucca)
相:作用:現起(現象):近因:
(12)昏沈(thīna)
相:努力しない;精進しない。
作用:精進の除去。
現起(現象):心の沈潜、または物事に取り組む精進力の減衰。
近因:怠惰な所縁が不如理作意を起すに至る。
(13)睡眠(middha)
相:心所の不適業。
作用:意門の閉塞、または相応法の沈滞。
現起(現象):1、目標からの退散。
2、昏々と眠る。
近因:怠惰な所縁が不如理作意を起すに至る。
(14)疑(vicikicchā)
相:懐疑(八事に対する懐疑)。
作用:(八事に対して)動揺する。
現起(現象):1、(八事に対して)躊躇して決められない。
2、多くの立場がある。
近因:八事に懐疑して、不如理作意を起す。
以下の八事に懐疑する;
1、真実の仏。
2、真実の法。
3、真実のサンガ。
4、戒定慧の三学。
5、過去世、すなわち、過去の五蘊。
6、未来世、すなわち、未来の五蘊。
7、過去世と未来世、すなわち、過去と未来の五蘊。
8、縁起。
(12-6につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は<菩提樹文庫>までお知らせ下さい。http://bodaijubunko.sakura.ne.jp/index.html
<本雅難陀尊者(Ven. U Puññānanda)著 『禅修指南』Meditation Guide 第二版 中国語→日本語 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>