翻訳『親知実見』#29-8
あなたが好ましく思い、かつ尊敬し、敬愛する一人の人を対象として、慈の修習に成功したならば、もう一人別の、あなたが好ましく思い、かつ尊敬し、敬愛する同性を対象にして修行する。
この様にして、約10名程の、あなたが好ましく思い、かつ尊敬し、敬愛する人に対して慈心を修習し、それぞれの人間を対象とした修習で、それぞれ第三禅に到達できる様にする。
この段階までくれば、あなたはあなたが極めて親愛する(atippiyasahāyaka)同性に向けて、安全に慈を修行することができる。約10名の、極めて親愛する同性を対象に取り、同様の方法を用いて、彼らに対して、逐一、第三禅を証得するまで、慈愛を散布する。
その後、10名くらいの、あなたと同性で、愛憎のない人を選び、同様の方法を用いて、第三禅を証得するまで、彼らに慈愛を散布する。
ここにおいて、あなたはすでに、慈心ジャーナに関して、相当程度の熟練と把握がなされていると思われ、そうであれば、あなたは同様の方法を用いて、約10名の、あなたが嫌いな同性に対して慈を修することができる。
もし、あなたが、あの菩薩の様な偉人であればーー彼は過去生において、かつて、大猿(Mahākapi)に生まれ変わった時、彼を傷つけた誰をも恨む事がなかったーーあなたが、真正に、どの様な人にも、嫌いにならず、また蔑視する事もないならば、この様な対象を苦労して探す必要はない。
唯一、嫌いな人がいる修行者、他者を蔑視する事がある修行者のみ、この種の人間に向けて慈を修行する。
この種の方法を用いて慈心の修習をするが、容易なものから困難なものへ、一歩一歩、一種類の人々に対して、第三禅を証得するまで、定力を育成し、あなたの心を益々柔軟、平和で、善良、柔和である様にする。最後には、四種類の人間ーー尊敬する者、親愛なる者、中立的な者、嫌いな者ーーという各々一種類について、ジャーナを証得する様修習する。