実例
一名の女性禅修行者による識別
更に明瞭に理解するために、我々は、一名の禅修行者が、どの様な現象を識別することができるのか、を例を挙げて説明する。
彼女が、臨終の時の名色法を識別している時、彼女は、一人の婦人が、仏教の出家僧侶に果物を供養している業を見た。
次に、彼女は、四界の識別から始めて、更に一歩進んで、当該の婦人の名色法を調べた所、その婦人は、非常に貧しくて、かつ、教育を受けたことのない村人である事を発見した。
己自身の貧困の境遇に思いを致し、彼女は当該の僧侶に供養をし、同時に、来世には、都会に生まれて、教育を受けた女性になりたい、と発願した。
この例において:
1)「都会において、教育を受けた女性」が、真実に存在すると錯覚するのは、無明(avijja);
2)教育を受けた女性の生命を貪欲に求め、渇愛するのは、愛(taṇhā);
3)教育を受けた女性の生命に執着するのは、取(upādāna);
4)果物を僧侶に供養した善行は、行(saṅkhāra);
5)業、すなわち、それらの業力。
今生において、この禅修行者は、緬甸(ミャンマー)の大都市において、教育を受けた女性となった。
彼女は(正見でもって)、過去世において、果物を供養した所の業力が、どの様にして、今生の果報五蘊を引き寄せたのか、を直接識別することができた。
この種の方法でもって、因果を識別する能力を、縁摂受智(Paccayapariggaha‐ñāṇa)と言う。
<翻訳文責:緬甸パオ森林僧院/ヤンゴン分院所属/Pañña-adhika Sayalay般若精舎>