Sayalay's Dhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。

般若の独り言~執心と向き合う

一年ほど前、老人向け体操教室に参加する様になって、

ある老人(女性)と知り合いました。

彼女は、私が尼僧であるのを知って

「仏教の本質とは何ですか?」

と聞いてきました。

私は

「それは無常・苦・無我です」

と答えながら、嬉しくなりました。

これで、原始仏教を理解する人が一人増え、結果、人生の喜怒哀楽を離れ、苦界を離れることができる人が一人増えるかもしない、と思ったのです。

しかしながら、一年たってみて、彼女は、原始仏教にこれ以上の興味を示さない・・・この間、これはと思うテーラワーダ仏教の資料を幾つか、差し上げましたけれど、何の反応もありませんでした。

その内、好きなのは親鸞上人で、愛読書は「歎異抄」らしい(笑)という事が判明し、とてもがっかりしました。

そして、私は、心を静かに、安般念をしながら、一年前の己自身の心の動きを観察してみました。

そう、自分が

「この人は原始仏教が好きかもしれない。

脈ありそうだ、法友、道友になってくれるかも!」

と、何の根拠もなくそう判断し、彼女に執心したのが、間違いの元でした。

私も、熱心なクリスチャンに出会ったら、興味本位で

「キリストって何を教えたのですか?」

と問うかもしれない。一種の社交辞令ですよね。

彼女に出会って、法友に出会った様な気分になった時の、己の心の高ぶり、それは、己自身が、己自身の心を守らなかった、己自身の落ち度。

そう分かると、心は、すっきりしました。

台湾の釈従信尊者(注1)がおっしゃっていた

テーラワーダ原始仏教)は一人で楽しむもの。

弟子をとってはならない。」

の意味がよく分かります。

究極諦、アビダンマは、多くの人には、縁薄く、理解不能なのですから。

注1=『阿含経正見』『原始仏教に帰れ』の著者。

1980年ころ、台湾において大乗仏教を批判し、

〈本師釈迦牟尼仏に帰れ〉と主張した、台湾における原始仏教運動の先駆者。

 

   <緬甸パオ森林僧院/ヤンゴン分院所属/

     Paññādhika Sayalay般若精舎>