<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
《名色の縁によりて六処》(Nāmarūpapaccayā Salāyatanaṁ)
(名色が生起するが故に、六処が生起する)
この段階においては、五個の識別(+するべき)部分がある:
1、名が生起するが故に、意処(manāyatana)が生起する。
2、名が生起するが故に、処色(āyatana)が生起する。
3、色が生起するが故に、処色が生起する。
4、色が生起するが故に、意処が生起する。
5、名色が生起するが故に、意処が生起する。
(A)名が生起するが故に、意処が生起する。
この段階において、ただ、意処と相応する所の心所を「名」として取る。
意処とはすなわち、心所と同時に生起する所の識である。
この段階において、心所法の支持とそれらと相応する心(=意処=識)を識別する。
1、結生名法(33)が生起するが故に、結生意処が生起する;
結生名法(33)は因、結生意処は果。
2、有分名法(33)が生起するが故に、有分意処が生起する;
有分名法(33)は因、有分意処は果。
3、死亡名法(33)が生起するが故に、死亡意処が生起する;
死亡名法(33)は因、死亡意処は果。
(ここにおいて列挙した例は、喜俱三因者の結生、有分と死亡である)
五門転向名法(10)が生起するが故に、五門転向意処は生起する;
五門転向名法(10)は因、五門転向意処は果。
4、眼識名法(33)が生起するが故に、眼識意処が生起する;
眼識名法は因、有分意処は果。
5、受領名法(10)が生起するが故に、受領意処が生起する;
受領名法(10)は因、受領意処は果。
6、推度名法(11)が生起するが故に、推度意処が生起する;
推度名法(11)は因、推度意処は果。
確定名法(11)が生起するが故に、確定意処が生起する;
確定名法(11)は因、確定意処は果。
速行名法(?)が生起するが故に、速行意処が生起する
速行名法(?)は因、速行意処は果。
7、彼所縁名法(?)が生起するが故に、彼所縁意処が生起する;
彼所縁(?)は因、彼所縁意処は果。
意門転向名法(11)が生起するが故に、意門転向意処が生起する;
意門転向名法(11)は因、意門転向意処は果。
註:名業処に示す通り、推度、速行と彼所縁の中の「名」=相応心所を識別する。善と不善速行心グループを識別する。五門転向、確定、速行と意門転向は、果報輪転に属さない為、それらを(+識別する事を)省略してもよいが、しかし、如何なる究極界も取りこぼさないという意味において、それらを識別するのならば、それも間違いではない。
禅修行者が、それらは果報輪転には属しておらないという事を理解していれば、問題はない。同等の方法を用いて、耳門心路過程などなどを識別する。五蘊界の名(=心所)は、「同伴」(すなわち、相見合う依処色、たとえば、心所依処)が存在する下でしか、意処を支援できない(+という事を理解する事)。
(B)名が生起するが故に、処色が生起する
Pacchājātā citta cetasikā dhammā purejātassa imassa
kāyassa pacchājāta paccayena paccayo.
その意味はすなわち、四無量果報を除いて、一つひとつの後生(注42)名法グループ(85心と52心所の、すべての組み合わせ)は、皆、前生心識刹那の中において生起した所の四生色身(四等起色身、catusamṭṭhānika rūpakāya)を支援する。(《発趣論》)。
1、結生名蘊と同時に生起する所の一生身(ekaja-kāya、すなわち、業生色、または別の言い方では、二生身、すなわち、業生色と時節生色)が住時(ṭhiti)に到達した時、第一有分名蘊法縁は、後生縁力(pacchājāta paccayā satti)によって、それを支える。
2、前生有分名蘊(たとえば、第一有分)と同時に生起する所の三生身(tijā-kāya、すなわち、業身、心生と時節生色)が住時に到達した時、後生心と心所名蘊縁法は、後生縁力によって、それを支える。
3、(食生色生が生じる時に)前生心と同時に生起する所の四生身(catuja-kāya、すなわち、業生、心生、時節生と食生色)が、住時に到達した時、後生心と心所名蘊縁法は、後生縁力によって、それを支える。
4、欲界有情の結生から数えて、第15番目の有分心と同時に生起する所の四生身(すなわち、業生、心生、時節生と食生色)が、住時に到達した時、後生意門転向名蘊縁法は、後生縁力によって、それを支援する。(色界有情は、三生身である。)
5、五門転向と同時に生起する所の四生身(または三生身)が住時に到達した時、後生五識名蘊縁法は後生縁力によって、それを支援する。
6、五識と同時に生起する所の欲界三生身(すなわち、業生、時節生と食生色、または色界では二生身、すなわち、業生と時節生色)が住時に到達した時、後生受領名蘊縁法は、後生縁力によって、それを支援する。
7、受領名蘊と同時に生起する所の欲界四生身(すなわち、業生、時節生、心生と食生色、または色界では三生身、すなわち、業生、心生と時節生色)が住時に到達した時、後生推度名蘊縁法は、後生縁力によって、それを支援する。
上に述べた方法に基き、後生心と心所(名蘊)は、前生心と同時に生起する所の四生色を支援する事を理解しなければならない。
この「名が生起するが故に、処色が生起する」の段階において、後生心と心所の二者を因とする。前生心と同時に生起して、現在は住時にある眼処、耳処、鼻処、舌処と身処は、果に属する「処色」である。
業力が尽きていないならば、五種類すべての処色はみな、一つひとつの心識刹那の生、住と滅時において、生起する能力を擁している。
もし、それらを複雑にしたくないならば、それらを個別の識別する事も出来る。そうでないならば、それらを同時に識別する事もできる。
個別の識別方法は以下の通り
1、有分波動名法が生起するが故に、眼処が生起する;
有分波動名法は因、眼処は果。
(この眼処は、過去有分[atīta bhavaṅga]と同時に生起する所の、眼処である。)
2、有分断(bhavaṅgupaccheda)名法が生起するが故に、眼処が生起する;
有分断名色法は因、眼処は果。
(これは有分波動[bhavaṅga calana]と同時に生起する所の眼処である)。
3、五門転向名法が生起するが故に、眼処が生起する;
五門転向名法は因、眼処は果。
(これは有分断と同時に生起する眼処である)
4、眼識名法が生起するが故に、眼処が生起する;
眼識名色法は因、眼処は果。
(これは五門転向と同時に生起する所の眼処。同様の方法でもって、耳識等々を識別する。)
5、受領名法が生起するが故に、眼処が生起する;
受領名法は因、眼処は果。
(これは受領と同時に生起する眼処である。)
6、推度名法が生起するが故に、眼処が生起する;
推度名法は因、眼処は果。
(これは受領と同時に生起する眼処。)
7、確定名法が生起するが故に、眼処が生起する;
確定名法は因、眼処は果。
(これは推度と同時に生起する眼処。)
8、第一速行名法が生起するが故に、眼処が生起する;
第一速行名法は因、眼処は果。
(これは確定と同時に生起する所の眼処。)
9、第二速行名色法が生起するが故に、眼処が生起する;
第二速行名法は因、眼処は果。
(これは第一速行と同時に生起する所の眼処。)
この様に、後生心と心所名法グループは、前生心と同時に生起する眼処を支援する事を知見する。この方法で六種類すべての心路過程を識別する。同様の方法を用いて、耳処等を識別する。
もし、禅修行者がそれらを全体として識別したいのであれば、以下の様にして、五処色すべてを識別する。
全体的な識別方法
1、有分波動名法が生起するが故に、五処色が生起する;
有分波動名法は因、五処色は果。
(この五処色は、過去有分と同時に生起する所の眼、耳、鼻、舌と身処である。)
2、有分断名法が生起するが故に、五処色が生起する;
有分断名法は因、五処色は果。
(この五処色は、有分波動と同時に生起する所の眼、耳、鼻、舌と身処である。)
3、五門転向名法が生起するが故に、五処色が生起する;
五門転向名法は因、五処色は果。
(この五処色は、有分断と同時に生起する所の眼、耳、鼻、舌と身処。)
4、眼識名法が生起するが故に、五処色が生起する;
眼識名法は因、五処色は果。
(この五処色は、五門転向と同時に生起する所の眼、耳、鼻、舌と身処。)
この様に、後生心と心所(名法)は、後生縁力によって、前生心と同時に生起する所の五処色を支援する事を知見する。六門すべてを識別する。
(C)色が生起するが故に、処色が生起する
(これは「名色縁」の中の色が「六処」の中の処色を支援するのである。)
1、(眼処と)同一の一粒の色聚の中の四界が生起するが故に、眼処が生起する;
同一の一粒の色聚の中の四界が因、眼処は果。
2、同一の一粒の色聚の中の命根が生起するが故に、眼処が生起する;
同一の一粒の色聚の中の命根が因、眼処は果。
3、同一の一粒の色聚の中の食素が生起するが故に、眼処が生起する;
同一の一粒の色聚の中の食素が因、眼処は果。
註:同様の方法を用いて、引き続き、同一の一粒の色聚の中の
(1)四界、(2)命根、(3)食素
が、どの様にしてそれぞれに、耳、鼻、舌と身を支援するのかを識別する。
四界は、助力(upatthambhaka satti)によって、同一の一粒の色聚の中の処色を支援する;
命根は、随護力(anupālaka satti)によって、同一の一粒の色聚の中の方処色を支援する;
食素は、助力によって、同一の一粒の色聚の中の処色を支援する。
食素自体は、食生食素の助力を受けて初めて、処色を支援する事ができる。
胃の中において、先ほど食べたばかりの、いまだ消化されていない食物は、時節生八法色聚である。
業生の消化の火界(pācaka tejo dhātu)の援助の下、これら時節生八法聚の中の食素(ojā)は、食素八法聚を製造する事ができる。
これらの色法は、食素によって引き起こされる為、故にそれらは、食生色と呼ばれる。
これらの食生色の中の食生食素(āhāraja ojā)は、業生食素、心生食素、時節食素と前生食生食素を支援する時、それらの一つひとつは、新しい色聚を製造する事ができる。
この様な生起・発生と支援の下、諸々の処色は、強化される。
支援を受けた食素の中の、業生色聚の中の業生食素もまた、その中に含まれる。
智でもって、これらを知見した後、上に述べた様に識別する。
同様の方法を用いて、耳処から身処までを識別する。
注42:《智慧の光》では、前生(purejāta)は、前生起を言い、後生(pacchājāta)は、その後に続く生起を指す。それらは24縁の中の二者である。
(10-18につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は<菩提樹文庫>までお知らせ下さい。http://bodaijubunko.sakura.ne.jp/index.html
<本雅難陀尊者(Ven. U Puññānanda)著 『禅修指南』Meditation Guide 第二版 中国語→日本語翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>