★『教海覚舟』<教えの海悟りの舟>(6-6)(私家版)
彼の父王は、菩薩が、口がきけないし、その上、灌頂式典においても、まっすぐに立っていられないのを見て、彼に対して、非常に失望し、この不祥(不肖)の人は、宮廷に悪運を齎すと考え、御夫の善喜に、王子を森に連れて行って生き埋めにする様に命令した。
御夫が、王子を森に連れて行くと、王子が口をきいた。
御夫は、彼に、なぜ、宮廷にいる時に、口をきかないのか、と訊ねた。
経では、王子は以下の様に偈頌を作って答えたという。
”Purimaṃ sarati so jātiṃ、
yattha rajjamakārayi;
Kārayitvā tahiṃ rajjaṃ、
pāpattha nirayaṃ.
Vīsatiñceva vassāni、
tahiṃ rajjamakārayi;
Asītivassa sahassāni、
nirayamhi apacci so.
Tassa rajjassa so bhīto、
mā maṃ rajjābhisecayuṃ;
Tasmā pitu ca mātucca、
santike na bhaṇī tadā.
”私が己自身の前世を思い起こすと、一個の王国を統治しており、死後、地獄に落ちた。
私は、国家を 20 年統治したが、地獄では、8万年の長い間、苦しみを受けた。
私は、心中で、王権の統治を恐れている。
統治者になりたくない。
故に、父母の前では、口をきかないのだ。”
(注1)
注1=この段は、御夫の、皇后への報告を引用した。 (6-7につづく)
<願以此法布施功徳、早日証得涅槃楽>