<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
しかし、ある時には、以前の不善業が現在の善業の親依止縁になる事もある。
たとえば、悪魔のような殺人鬼であったアングリマーラ(Aṅgulimāla)(+の例)である。
アングリマーラは、元々は非常に優秀な学生であったが、他の学生の嫉妬にあって、アングリマーラが先生を殺す計画を立てている、と密告されてしまう。
先生は、深く考えずに、これを信じてしまい、何か策を講じて、彼を罰しようとした。
当時のインドの伝統では、学生は卒業する時に、教師に何かのプレゼントをしなければならない。
教師は、アングリマーラに、自分に何をプレゼントする気かと尋ね、アングリマーラは
「あなたの欲しい物を、私は用意する事ができます。」と答えた。
先生は「私は一千本の指が欲しい」と言った。
アングリマーラは非常に従順で、先生の無理難題を受け入れた。
こうして、アングリマーラは森の中に待機して、森の小道を歩く人間を殺し、その指を切り取って、輪に繋いで、首に掛けるようになった。
アングリマーラの力は非常に強かったので、森周辺の町の人々は、大いなる恐怖で震え上がった。
999個目の指を切り落とした時、彼は思った:
「あと一個で、私の任務は完成する。先生の願いを満たすことができる。」
仏陀には、毎朝、宇宙の衆生を観察し、自分が助ける事のできる衆生を見つけ出す、という習慣があった。
その日、仏陀はアングリマーラを観察した所、アングリマーラには、阿羅漢果を証悟する素質、チャンスがあるという事を知った。
しかし、この日、彼が最後に殺そうとしているのは、己自身の母親であった・・・というのも、彼の母親は、国王が軍隊を派遣して彼を逮捕しようとしているという話を聞き、心中が焦りで一杯になり、アングリマーラにこの事を知らせ、同時に、彼に殺人を止める様、諭すつもりであったからである。
もし、アングリマーラが母親を殺したならば、彼は、無間の罪を犯すことになるが、そうなると、この生では、決してジャーナを証する事はできないし、聖道果を証する事は、更に不可能になる。
仏陀は、アングリマーラに対して、大いなる悲心が生じ、この惑い、失われた息子(=常軌を逸した者)を度し、救済する事に決めた。
(9-8につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は、
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<『24縁発趣論』スシラ・サヤレー著 中国語版→日本語訳出
翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>