Sayalay's Dhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。

パオ・セヤドー問答集~006>問答(一)問1-5(後半)

 #006-150701(P32~34)

答1-5の後半

今、私は五蓋(nīvaraṇa五種類の障碍)について簡単に説明します。第一番目の蓋は、貪欲(kāmacchanda)です。それは人または財物への貪愛で、感官の対象を獲得しようとする欲望です。例を上げて説明しましょう ; あなたは自分の住み家を貪愛しているかもしれません。あなたは座禅・瞑想している時思います「ああ!私の家が綺麗で見た目もすばらしければどんなにいいでしょうか!」又は「おお!この家全体を私一人で使えればどんなにいいでしょうか!」と。もし貪欲によって征服されたならば、あなたは修行の対象に適切に専注する事ができません。あなたは、強くて力のある正念と精進をもって、貪欲の生起を阻止しなければなりません。

二番目の蓋とは瞋恨(byāpāda)で、それは人または物に対する憤怒と恨みまたは不満です。たとえば、あなたのそばに、共に修行している瞑想修行者が座席に座ろうとして衣服のこすれる音を出した時、あなたは怒り、こう思います「ふん!こいつはなんて騒がしいヤツなんだ!」と。もしあなたの心が憤怒と恨みまたは不満によって征服されたならば、あなたは、修行の対象に適切に専注する事ができなくなります。

三番目の蓋とは昏沈睡眠(thina-middha)です。もしも心の力が虚弱で、修行の対象に興味がわかない時、昏沈睡眠が生じます。ただし、昏沈睡眠は、疲労の為または睡眠不足でも生じる事があります。

第四番目の蓋は掉挙と後悔(uddhacca-kukkucca)です。もしあなたの心が動揺して不安(掉挙)ならば、灰神楽に石を投げつけた時のように、灰が舞い上がり、あちらこちらに飛び散ります。同様に、心が掉挙である時、心はあちらこちらに漂います。修行する時、あなたはだらけて心を修行の対象から離れさせるような事があってはなりません。もしあなたがそのようにするならば、掉挙と不安が生じてきます。後悔とは、以前した事のある悪い事や、良いことをしていない事を悔やむもので、これについても同様に、あなたは強く力のある正念と精進によって、掉挙と後悔が生じる事を阻止しなければなりません。

五番目の蓋は、懐疑(vicikicchā)で、下記の対象を懐疑する事です。

一、仏; 二、法; 三、僧; 四、三学:戒・定・慧; 五、過去の五蘊(khandha);六、未来の五蘊; 七、過去と未来の五蘊; 八、縁起(paṭiccasamuppāda)。

もし定学に対して懐疑するなら、あなたは禅定を完成する事ができないでしょう。たとえば、あなたは「安般念を修行してジャーナに達する事ができるのだろうか?安般念の禅相に専注して本当にジャーナに達する事ができるのだろうか?」と疑惑を抱くことがあるかもしれません。

五蓋とジャーナは相互に対立するものなのです。

どの人間にも心があり、善心は善果を生じ、不善心は悪果を生じさせます。専注する心は、禅相を生じさせる事ができ、禅相に真実専注する心はジャーナを生じさせる事ができます。もし当該のジャーナが、死亡する時までずっと完全で安定性を保持しているならば、それは修行者をして梵天界に生まれさせる事ができます。ジャーナを基礎にした、観智と相応する専注心は、道智と果智を生じさせる事ができます。当該の道智と果智は、涅槃を透視する事ができます。もし、その道智と果智が阿羅漢道智と阿羅漢果智(arahatta-maggañāṇa、arahatta-phalañāṇa)であれば、死後、あなたは般涅槃に入ります。

しかし、五蓋に相応する心(たとえば、貪欲、怒りと恨みなど)は人をして四悪道に生まれ変わらせます。故に心とは、人をして最高の境地に至らせ、涅槃までをも証悟させ得ますが、四悪道に落として苦しみを受けさせる事にもなります。あなたはどちらがお好みですか?このようであるから、あなたは一分一秒、善良な心を保持し続けて、心をして五蓋からの汚染から離れさせ、涅槃に向かうよう努力する必要があります。

<禅修問題与解答(パオ禅師等講述)>中国語版から翻訳  

(翻訳文責 Pañña-adhika sayalay)

 

初めてご来訪の方へ:15年1月緬甸(ミャンマー)から日本への帰路の途中、台湾に寄りました。パオ・セヤドーの著作を頂けると聞き、新北市の寺院を訪問して上記<禅修問題与解答(パオ禅師等講述)>(中国語版)を入手しました。<パオ・セヤドー問答集(仮題)>として、毎日又は隔日、一遍ずつ翻訳して掲載する予定です(出張時除く)。「智慧の光」「如実知見」の姉妹版として、パオ・メソッドに興味のある方のご参考になれば幸いです。