人食い鬼は言った:「お前は、すでに死神の手から逃げたように
言うが、私はお前を信じない」
須陀須摩王は言う:「私の友人(人食い鬼と須陀須摩の二人は、
まだ王子であった頃、共に学んだ仲であった)、人食い鬼、
この世間において、道徳のある生活を送ることは、長寿では
あっても、罪悪感に満ちた生活を送るよりは、良い。
というのも、それらは、人々の非常に厭うものであり、
指弾するものであるから。
真実でない言葉は、人々の死後、悪道に生まれ変わらない
ということを保証しない。
友よ、『強風が大岩を天空まで吹き飛ばした』とか
『太陽と月が地上に落ちた』とか、または『すべての
河の水が上流に向かって逆流した』と言う人がいたら、
あなたはそれを信じても良い。
しかし、もし人が『須陀須摩が嘘をついた』と言うなら、
それは信じる事が出来ない。
友よ、若し人が『天空が裂けた』とか、『海が已に干上がった』
とか、『須弥山は已に一筋の痕跡も残らないほど、
削り取られた』と言うなら、あなたは信じなくでもよいが、
しかし、人が『須陀須摩が嘘をついた』と言うなら、
それは信じてはいけない。」
しかしながら、人食い鬼は依然として、彼を信じなかった。
人食い鬼が依然として、彼を信じなかった為、
須陀須摩は考えた:
「人食い鬼は、私を信じようとしない。
私は、彼が信じられるように、誓いを立てよう。」
そして、言った:
「友よ。私を降ろしてください。私はあなたを説得
する為、誓いを立てましょう。」
人食い鬼が彼を降ろすと、彼は言った:
「友よ。私は剣と矛を持って誓います。
私は、難陀婆羅門との約束を果たすために、
町へ行って四首の偈を学んできます。
そのため、暫くここを離れますが、その後、
私は必ず、私の約束を守るために、あなたに
会いに戻ってきます。
もし、私が真実を言っていないのならば、
二度と、剣と矛などの武器で守られた、
皇族には生まれ変わりません。」
人食い鬼は考えた:
「この須陀須摩王は、普通の国王なら恐ろしくて
発する事のできない誓いを立てた。彼が戻ってきても
こなくても、自分が国王であることには変わりがない。
もし彼が戻らないなら、私は自分の腕を切って、
その血でもって、ガジュマル樹神を祭ればよい。」
そう考えて、人食い鬼は、須陀須摩菩薩を町に行かせた。
須陀須摩王は、真に言った通りに実行し、難陀婆羅門から
四首の偈を学んだ後、人食い鬼に会うために戻ってきた。
これが、すなわち、菩薩がどのようにして、
自己の命を顧みずに、約束を守るのか、という例である。
(+ )(= )訳者。(つづく)
(<パオ・セヤドー講述「菩提資糧」>(1999年版)
中国語版→日本語 翻訳文責Pañña-adhika sayalay)