南伝仏教のDhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。尚、修行については必ず経験豊富な正師について下さるようお願いします。

「メーチ・ケーウの物語」(翻訳文)5-9

   <Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu> 

アチャン・マハブーワは、彼女の頑なで、無知なる様に、これ以上耐えきれず、以前の作風を変えて、彼女に、心が外へ向かって、外部の境界を探索しないように、強く要求した。

というのも、このまま、覚知の間違った使いかたをしていては、彼女にとって、生老病死の根源を断ち切ることの、利益にならないが故に。

彼は、メーチ・ケーウに、このように指導するのは、彼女の為であると言い、その後に、彼女に必ず、己の指示を守るようにと、厳しく指導した。

メーチ・ケーウは、己の知識と理解に十二分の確信を持っていた為、アチャン・マハブーワがどのように警告しようとも、彼女の禅修行は旧態依然として変わらず、彼女は、アチャン・マハブーワと、禅法の真正なる意義について、論争した。

今度ばかりは、アチャン・マハブーワも徹底的に怒り、この、言うことを聞かない生徒を、受け入れる事など、出来ないと思った。

彼は立腹し、獰猛な語気と表情で、彼女にこれ以上、覚知を外部に向けてはならないと叱り、彼女に対して、直接注意力を反対側に転換して、内へ向けて専注するように、歯に衣を着せぬ言い方で、命令した。

彼は、全くの妥協の余地なく、彼女に言った。

この様に努力して修行する以外に、汚染された煩悩を消し去ることはできない、のだと。

ある日の夜、メーチ・ケーウがまたもや、己に固執して、自己弁護している時、アチャン・マハブーワは、彼女の言葉を遮り、今すぐここを去るように、と言った。

彼は、まったく一筋の躊躇も見せず、彼女に今すぐ出ていくように、今後、二度とここへ戻ってくる必要はないと言い、他の尼僧の面前で、粗野で耳に障るような言葉で、彼女を追い出した。

メーチ・ケーウは、アチャン・マハブーワがこれほど下品な言葉を使うことに驚いたし、また、彼女はこれまで、このような事が起こるなどと考えたこともなかった。

彼女は洞を出て、泣きながら道場に戻ったが、道々、己を責める厳しい言葉が、耳の中で木魂し、徹底的に人格が崩れ去ったようで、彼への信頼も悉く尽き果て、もう二度と彼には会わないと思った。

メーチ・ケーウは、これまでのすべてが無駄になったようで、重い足取りで、坂になった山道を降りて行った。

彼女が初めてアチャン・マハブーワに会った時、彼女は己の直観から、彼こそは、依止できる禅師であると思ったが、今や、彼は、情け容赦もなく、彼女を追い出した。

これから誰に、禅修行の指導をしてもらえばいいのか?

これほど長い間、四方八方に探し求め、今、願いが叶い、これほど理想的な禅師を見つけることができたというのに、参学の結果は、余りにも惨めなものであった。

今、メーチ・ケーウの目の前には、ただ暗闇しかなく、どうしていいか、分からなかった。

(5-10につづく)

 <Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>

(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は、

<菩提樹文庫>まで。ご協力、よろしくお願いいたします。

<原題「美琪喬ーー一位阿羅漢尼修道証果之道」 Dhammavamsa Publication 

中国語版→日本語訳出 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>