『涅槃証悟の唯一の道』 パオ・セヤドー著(9-11)
<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
縁滅の識別
逆順(paṭiloma)の縁起とは、12支縁起すべての還滅を言う。
これらの因支は、阿羅漢を証悟した時に無効となる。
それは、阿羅漢道の威力によって、煩悩輪転は余すところなく滅尽するが故に・・・すなわち、無明、愛、取の滅尽であり、これを ”煩悩般涅槃” (kilesa parinibbāna)と呼ぶ。
というのも、煩悩が般涅槃すれば、業輪転は滅尽し、それはすなわち、業行と業力の滅尽であるが故に。
この五因が滅尽したため、当該の阿羅漢が阿羅漢果を証悟する以前に累積した所の善または不善の業は、その死後、どの様な来世をも引き寄せる所の、どの様な力も持たないからである。
しかしながら、果報輪転としての、五果はいまだ継続して運用している・・・当該の阿羅漢が世を去るまで。
阿羅漢が世を去るのは ”般涅槃死”(parinibbāna cuti)であって、また ”蘊般涅槃”(khandha parinibbāna)とも言う。
それはすなわち、果報輪転の完全な、余す所ない滅尽であって、五果さえも二度と再び存在することがない。
もし、あなたが観の修習に精進し、かつ充分に強い過去の波羅密があるならば、観智が成熟した時、あなたは今生において、阿羅漢になることができるか、または未来世において、阿羅漢になる事ができる。
禅の修行に勤勉でありさえすれば、あなたは、自分自身が、未来において阿羅漢を証悟するのを見ることができるであろう。
もし、あなたが禅の修行を放棄して、ただ欲楽を享受するだけであるならば、あなたの未来は変化してしまうであろう。
逆順の縁起を識別する事は、すなわち、未来の阿羅漢を識別する事、または今生、または未来世の・・・。
先ほど解説した通りに、これは五因と五果の未来における完全な滅尽を識別するものである。
あなたが己自身の証知を通して、正順と逆順の縁起の二者を知見することができるならば、この種の証知は、異なる類型の邪見ーー常見と断見ーーを断じ除く事ができる。
もし、あなたが己自身自らの知見でもって、正順と逆順の二つの縁起を、見ることができないのならば、これらの異なる類型の邪見を断じ除く事はできない。
これが、縁生滅(paccayato udayabbaya)である。
この種の観智は、また ”縁摂受智”(Paccayapariggaha ñāṇa)とも言う。
(+あなたが)この段階における(+修習に成功したならば)、我々が、以前に言及した所の、三種類の遍知の内の第一番目ーー知遍知(nāta pariññā)を、あなたはすでに完成したのだ、と言える。
(9-12につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は<菩提樹文庫>までお知らせ下さい。
<『涅槃証悟の唯一の道』パオ・セヤドー著(原題「証悟涅槃的唯一之道」)
中国語版→日本語訳出 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>