パオ・セヤドー弘法記念「顕正法蔵」10-5(295/430)
<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
更に明確に理解を進めるために、私は仏陀の時代に発生した一つの物語を語りたいと思う。
富楼那(Puṇṇa)は、優多羅難陀母(Uttarā-Nandamātā)の父親である。彼は王舎城の貧乏人で、富豪の須摩那(Sumana)に雇われて、仕事をしていた。
しかし、彼と彼の妻は、シャーリプトラ尊者に対して、非常に強い信心(=信頼)の心を持っていた。
ある祭りの日、彼の主人は彼に休んでよいと言ったが、彼はやはり田畑に仕事に行った。というのも、彼は、余りに貧しくて、何かを楽しむ、という余裕が、一つもなかったからである。
彼が田畑で仕事をしていると、シャーリプトラ尊者が歩いてきて、彼の田畑から余り遠くない所に座って、滅尽定に入った。
富楼那はシャーリプトラ尊者を見て、非常に喜んだ。シャーリプトラ尊者が出定するのを待って、彼は尊者に、歯を磨くための、木の枝と水を、供養した。
その後、シャーリプトラ尊者はそこを離れた。
その時、富楼那の妻は、夫の為に食事を届けようとして、シャールプトラ尊者に出会った。
彼女は心の中で考えた:
「私たちが、物があって布施ができる時には、それを受け取ってくれる人がいない、ということがある;
ある時は、受け取ってくれる人がいるのに、私たちが貧しいために、布施する物を、持っていないときがある;
今日は幸運にも、この尊者が、受け取り人としていらっしゃるだけでなく、布施する物も持っている!」
こうして、彼女は喜んで、持っていた食物を、シャーリプトラ尊者に供養した。
その後、彼女は家に戻って、もう一度食事を作り、夫の所へ持って行った。
富楼那は、妻が食べ物をシャーリプトラ尊者に供養したのを聞いて、心の中で、非常に喜んだ。
食事の後、彼は昼寝をした。
昼寝から覚めて、彼は先ほど、己自身が耕していた田畑が、黄金に変っているのに気が付いた。
彼はこの事を国王に報告し、国王は即刻車を出して、黄金を受け取ろうとした。
しかしながら、国王の部下が、国王の為に黄金を取りに来たと宣言して、手でもって取ろうとすると、黄金はたちまち土に戻った。
唯一、富楼那が取ると宣言した時にのみ、黄金を手に取ることができた。
こうして、黄金はすべて富楼那のものとなった。
国王は彼に名前を賜ったーー「多富長者」(Bahudhanaseṭṭhi)。
彼は新しい家を一軒建てた;
新しい家屋の落成式において、仏陀とサンガに大いに布施をした。
仏陀が、随喜の謝辞を述べる時、富楼那と妻、及び娘の優多羅は、全員ソータパナ果を証得した。
この物語における、富楼那と妻は、みな有徳の人である;
彼らの供養した物品は、みな正当な方法で取得したものである;
彼らが供養する時、清浄で、汚染のない心があった;
彼らは、業果の法則に対して、堅固な信心(=確信)があった;
彼らは供養する前、供養する時と、供養した後、心は非常に愉快であった;
最も重要な一つの要素は:
受け取り人であるシャーリプトラ尊者は、滅尽定から出定したばかりの阿羅漢である、ということである。
すべての必要条件が、みな、揃っていた為に、彼らの、あの時供養における意門心路過程の中の、一番目の速行心の思は、今の生において非常に大きな善報を結成せしめたのである。
この種の業を「現法受業」(diṭṭhadhamma-vedaniya kamma)と言う。
この種の果報は、まるで人に信じてもらうに困難であるが、しかし、彼の七番目の速行心及びその他の五個の速行心の思が、未来世において結成するであろう果報と比べれば、この種の、現世における善報は、それほど大した事は無いのである。
七番目の速行心の思が、熟する時を「後後受業」(aparapariya-vedniya kamma)と言う;
それは来世の天界において殊勝で妙なる、善報を齎す。
中間の五個の速行心の思は、更に遠い未来において、極めて殊勝で妙なる善報を齎すが、これは非常に長い時間、持続するものである。
それは、彼があの布施をする前、する時、した後、非常に多くの善業を累積したのが原因である。
もし、あなたが、一弾指の間に、数百万個の意門心路過程が生・滅することを覚えているならば、そして、業とは、一つひとつの意門心路過程の中の、七つの速行心の中において形成されるのであるから、あなたはなぜ、彼があれほど多くの善業を累積したのかを、理解する事ができるであろ。
(10-6につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等ほぼ原文ママ。★誤字脱字を発見された方は<菩提樹文庫>までお知らせ下さい。http://bodaijubunko.sakura.ne.jp/index.html
<中国語→日本語 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>