8-5-5 二種類の禅定
二種類の禅定がある:近行定と安止定である。
安止定は、心が持続的に、不断に、目標、たとえば、安般念似相に、完全に沈入するものである。この時、当該の(禅修の)目標を覚知する心の合間に、有分心が生起することはない。
禅支はすでに、強くて、心をして、不断に目標につなぎとめておくことができる。
近行定では、心が目標に沈入する時間はますます長くなるけれども、いまだ、ある時には、心は有分心が生じて、(+集中が)途絶えてしまうことがある。
この段階では、五禅支の強度が足りないために、心は干渉を受けないで、(目標の中に)安止することができないのである。
8-5-6 転輪聖王の胎児
疏鈔では、比喩をもって、このことを解説している:
たとえば、一人の王妃が、将来転輪聖王になることができる胎児を身ごもったとする。
彼女は時々刻々、肉眼で己の子宮内の胎児を見ることができる。その時、彼女は、この胎児が出産前に死なないように、非常に慎重に、恭しく保護する。同様に、禅修行者は、非常に慎重に、恭しい心でもって、己の禅相を守らなければならない。怠惰な心、気の抜けた心、また健忘の心は、人をして、高度の修行の成就に導かせることは、ない。
故に、彼は、熱意、正知と正念を保持し、歩くときにも、立ち止まるときにも、座るときにも、横になるときにも、禅相に専注しなければならない。
たとえば、経行(行禅、歩く瞑想)の時、彼、まずは、経行処の起点に立って、呼吸に専注しなければならない。禅相と呼吸が結合して、かつ、彼の心が自動的に禅相に専注する時、彼は一心に禅相に専注する。専注した結果、定力が非常に強くなった時、(+修行者は)初めて、足を上げて歩き始める。歩くときは、引き続き、一心に禅相に専注する。
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。(5-22につづく)
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<パオ・セヤドー「顕正法蔵」2008年中国語版→日本語訳出
翻訳文 Pañña-adhika Sayalay>