<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
メーチ・ケーウは、生まれつき、世を憂うタイプの人間であったーー深く、同胞の、心霊的な人生の結末を憐れんだ。
今、彼女の心は、無上なる法の実相を証得して、人類の一切の概念を超越したが、しかし、どのようにすれば、仏法の真諦を、他の人に、分かって貰えるように、なるのだろうか?
たとえ、指導や説法を試みてみたとしても、普通の凡夫は、深く無明の中に堕ちこんでおり、あれほど殊勝な清浄を、体験し悟る事は、決して、できない。
彼女は、自分の教えを受け入れる人、己が心を砕いて教え導くに値する人を、見つける事はできないだろう、と思った。
少し考えると、彼女は、己の体験を、共に分け合い、共に享受したい、という気力を失った。
これはまるで、彼女は、命拾いの道を見つけることが出来たが、ただ、己一人が逃げ切れた事に満足し、老いて死ぬまで、自分一人で生きて行こうというようなものであった。
彼女は、この事を考え続けている内に、仏世尊に、思いを馳せた。
彼がどのように獅子吼して、苦の滅に至る道に、衆生を導いたのかを、考えた。
この時、再び、彼女は、出世間法を思い返し、また、修行と証悟の為に、己が歩いてきた道を振り返り、最後に彼女は、己自身もまた、一人の衆生に過ぎない事に、思い至った:
彼女は、他の人々と、何等、異なる所はない。
故に、必ずや、何人かの人は、彼女と同じ様に、根器が猛利である、に違いない。
彼女は、心を込めて、仏陀が衆生を度した所の数々を思い、仏法が、世間に齎すことのできる、大きな利益に思い至った・・・特に、正法を修行する者にとっての、利益を。
このような覚悟を決めると、彼女にようやく、説法をして、衆生を救おうという考え、彼女の教えを受け入れてくれる人を、指導しようという、思いが生じた。
メーチ・ケーウは、女性専門道場で、隠遁の生活を二年程過ごして、一心勇猛に、解脱を追求する事に、精進した。
今、彼女は遁世もせず、隠居もせず、皆と一緒に、日常的な作務に参加するようになった。
彼女は、同じ目標を目指す修行仲間が、菩提道の上において、すべての潜在的な能力を発揮できる機会を、持てるように、と願った。
(6-4につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は、
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<原題「美琪喬ーー一位阿羅漢尼修道証果之道」 Dhammavamsa Publication
中国語版→日本語訳出 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>