南伝仏教のDhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。尚、修行については必ず経験豊富な正師について下さるようお願いします。

翻訳『禅修指南』11-4(325/520)

<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>

非業生食=非執取食

Imesaṁ sattānaṁ khādantānampi akhādantānampi

bhuñjantānampi abhuñjantānampi paṭisandhicitteneva 

・・・(《相応部註》)。

Paṭisandhicitteneva sahajātāti lakkhaṇavacanametaṁ.

Sabbāyapi kammajarūpapariyāpannāya ojāya

・・・(《相応部疏鈔》)。

上に述べた註釈と疏鈔に基づくと、果報輪の一部の属する所の上述の四食は、四執取食(upādiṇṇaka āhāra)である。四非業生食(akammaja āhāra)または非執取食とはすなわち: 

1、触食は、善心、不善心と唯作心に相応する触。

2、意思食は善思、不善思、唯作思。

3、識食は、善識、不善識と唯作識。

4、段食は、心生食素、時節生食素と食生食素。

この四非業生食(非執取食)は、生死輪廻の苦(saṁsāsa vaṭṭa dukk)を支援する。もし、渇愛をして、この四食の根源とせしめないのであれば、それらは生起することができないが故に、隠喩の法(neyyattha)でもって、愛は因縁であるというのは適切である。

段食

食生食素は非執取食の中に含まれる。

食生食素には、四種類ある。すなわち:

1、業生食素によって製造される食生食素。

2、心生食素によって製造される食生食素。

3、時節生食素によって製造される食生食素。

4、前生生食生食素によって製造される食生食素。

ここにおいて、それらに関して些かの説明をする。

古代の大徳は「段食」を翻訳するのに、:「まだ一塊(+の団子状)になっていないながら、已に一塊になったかの状態」としている。

この訳文は、非常に奥深い含意がある。

色法または究極法は、一つの処から、別の一つの処へ移動する性質は持っていない。一たび生起するや否や、それらは即刻、生起した処で壊滅する。

食(たとえば、有情が食事をする)が、皿の上、口の中、喉の所、飲み込んだばかりの胃の中などにある時、それらは、ただ一つひとつのグループ毎の時節生食素八法色に過ぎない。

それらは、絶え間なく、不断に、色聚の中の火界(時節)によって製造された色法に過ぎない。

究極法の本質から見れば、色法は生起するや否や即刻、壊滅する。

咀嚼の時に生じる色法は一個であり、飲み込む時の色法は、また別の一個であり、胃の中の食物はまた別の一個である。

それらは、皿から口、口から喉、喉から胃へと、持続して存在できる究極法ではないのである。

それらは、長く存在する事が出来ない為に、人は、それを一塊の団子状にする充分な時間がなく、その様にして、飲み込むことは、できないのである。

しかしながら、名前を「食物」と呼ぶ所の時節生色聚の中の火界の支援の力が尽きていない時、新しい時節生色聚は、継続して不断に生起することができる。

故に食は、「一塊の団子状になってはいないけれど、一塊の団子状になっているかの如く(+のもの)」と訳されたのである。

今食べたばかりの食物(すなわち、段食と呼ばれる時節生色聚)の時節生食素は、命根九法聚の火界(消化の火界)の助けを得た時、食素八法聚を製造する事ができる。

それらは、時節生食素から製造された食生色である。

一つひとつの業生食素、心生食素、時節生食素及び前生食生食素は、あの食生食素の支援を受けて、一つひとつ(の食素)もまた、新しい食素八法聚を製造する事ができる。

これら新しい食素八法聚は、あれら食素が製造した食生色である。

また、これら食生色の中の食素もまた食生食素である。

これは、支援の力を提供する食生食素が、どの様にして食生食素を獲得するのかという(+説明である)。

四食の力量

1、段食は食素八法聚を引き寄せる。

2、触食は三種類の受を引き起こす。

3、意思食は三有(bhava)を引き起こす。

4、識食は結生名色を引き起こす。

(1)段食:上に述べた説明の様に、段食は食素八法聚を引きよせる。

(2)触食:

楽受を引き寄せる事の出来る能力を有する触が生起した時にのみ、触食は楽受を引き寄せる事ができる。

苦受を引き寄せる事の出来る能力を有する触が生起した時にのみ、触食は苦受を引き寄せる事ができる。

捨受を引き寄せる事の出来る能力を有する触が生起した時にのみ、触食は捨受を引き寄せる事ができる。

(3)意思食:欲界に生まれるに至る様にする業が欲有(kāma bhava)を引き寄せる。色界または無色界に生まれるに至る様にする業は、付合する有を引き寄せる。意思は三有を引き寄せる。

(4)識食:識食は、俱生等の縁力により、結生の刹那に相応の名蘊及び業生色を引きよせる。(《相応部註》)

「意思は三有を引きよせる」に関して、それは漏(āsava)に属する所縁及び、生死輪廻苦を「推転」せしめる能力を有する善思と不善思を指して言うのである事に注意する。

この様に言うのは、それらは、(+我々を)生死輪廻苦に至らせしめる特定因であるから、という事を理解しなければならない。

通常、一切の世間思(善または不善と唯作)は、相応の名法と心生色を引き寄せる因である。「識は結生名色を引き寄せる」(viññāṇaṁ paṭisandhi nāmarūpaṁ āhārati)というこの詞は、ただ結生識についてのみ述べているものである。通常、識が「食」と呼ばれるのは、それが相応の法と心生色を引き寄せるからである。

(一)四食の中において、段食(すなわち、四等起食素または四生食素)は、新しい食素八法聚を製造する事と、四等起色を支援する事によって、食としての作用を完成させる。

(二)ただ所縁と接触している時にのみ、触食は受を引き寄せる作用を完成させる事ができる(食の作用)。

(三)意思は心を促すか、または、因果の生起、またその後の連結に尽力した後、三有の食を引き寄せる作用を完成させる。

(四)ただ諸蘊の生起を省察し、かつ、所縁を明確に識知した後においてのみ、結生識は、完全に、相応法と業生色または心生色の食の作用を引き起こす事ができる。

(一)段食は、食素八法聚を製造する事を通して、また、四等起色を支援して色身を維持する事を通して、色相続流が中断しない様にする結果、諸々の有情が引き続き存在を維持する因となる。

色身は、業によって引き起こさるものではあるが、しかし、段食の支援の下、それは10年乃至100年、すなわち、寿命の終りまで維持する事ができる。

なぜ、母親が生んだ嬰児は、乳を飲ませる等の世話の下に、ようやく生き延びる事ができるのか?

これはまさに、柱で支えられた家屋が倒壊しないのと同じで、食の支援を受けた色身は、長く生きる事ができる。

四等起色を支援した後、段食は食の作用を完成させたと言えるが、しかし、それは、二種類の色相続流(すなわち、食等起色と執取色=業生色)の因である。

それは、随護力(anupālaka satti)でもって、業生色を支援し、生力(janaka satti、直接引き起こす力)でもって、食等起色を支援する。

(二)受の「足処」の所縁に接触した後、触食は、受を引き起こす事を通して、諸々の有情が引き続き存続する因となる。

(三)業(すなわち、善業、または不善業)を造(ナ)す事を通して、意思は有(bhava)の基因となり、諸々の有情が引き続き存続する因となる。

(四)所縁を明確に識知した後、識食は名色を引き起す事を通して、諸々の有情が引き続き存続する因となる。

Upādiṇṇarūpasantatiyā upatthambhaneneva

utucittajarūpa santatīnampi 

upatthambhanasiddi hoti'ti ・・・(《相応部疏鈔》)

上に述べた疏鈔は、以下の様に言う、

段食は随護力によって、業生色(すなわち、執取色)を支援し、また、生力によって、食等起色を支援する。業生色相続流の支援を通して、時節生色と心生色相続流を支援する作用を、同時に完成させる。

こうしたことから、食縁力(āhāra paccayā satti)を通して、業生色(すなわち、執取色)と食生色相続流を支援する(+現象に)言及した。

 当該の疏鈔は、随護力は、助力(upatthambhana)を指すと言う。

色身が継続して不断である様に維持する因は、すなわち、随護(保護)であるが故に。

に。

識別の要点

「食」を以下の二種類に分類する事ができる:

1、果報輪転四食。

2、業輪転四食。

《食經註》(《相応部註》)は、果報輪転四食を「食」としている:

業輪転四食を「食」とするのは、《相応註》、《根本疏鈔》、《大疏鈔》である。

もし、禅修行者が果報輪転四食の識別から始めたいのであれば、彼は以下の説明に基づいて識別するが、それは、結生刹那の四果報輪転法の識別から始める、という事である。

彼は同じ方法を用いて、彼の一生の中において生起した所の果報輪転法を識別する事から始める事もできる。

果報輪転四食から始める識別方法

もし、あなたの結生が三因喜俱結生であるならば、結生刹那は、すなわち、34名法と、30種類の業生色である。

結生刹那の四食とは:

1、段食:30種類の業生色の中の業生食素。

2、触食:結生識と相応する触。

3、意思食:結生識と相応する思。

4、識食:結生識。

この四食を識別することから始める。

この様に識別する時、もし、三世に分けるならば:

1、四食(すなわち、果報輪転四食)は、今世に属する。

2、有、取、愛、受、触、六処、名色及び識は、一つ目の過去世に属する。

3、行と無明は二番目の過去世に属する。

この様にして、更に遠くの過去と未来、三世を連貫する因果関係を識別する。同様の方法を用いて、あなたは、その他の果報輪転四食から始まる識別の修習をする事もできる。

業輪転四食から始まる識別方法

もし、あなたが、業輪転に属する四食を識別したいのであれば、あなたが未来の輪廻の為に造(ナ)した業輪転を先に識別する。

たとえば、未来において阿羅漢果を証悟したいと思う比丘が多くの業を造(ナ)したとして、あなたはその中の一個、己自身が覚えている所の業を選ぶ。

当該の業を造(ナ)した時に生起した四食とは:

1、業を造(ナ)す時、一つひとつの意門54色における、四種類(または身門内)の四等起食素は皆段食である。

2、善名法グループの中の触は触食である。

3、その時の思は意思食である。

4、その時の善識は識食(すなわち、業識である)。

この四食を識別する事から始める。

触、思と識は、業有の善行法と呼ばれる。

業有は業輪転の一部分である。

(一)業有=四食、取、愛、(無明)、受、触、六処、名色、識(果報識)は現在世に属する法である。

(二)行と無明は、第一番目の過去世に属する法である。

この例に鑑みて、更に遠い過去と未来世の識別もまた、同様である事を理解しなければならない。

記載されているもう一つ別の識別方法

Āhāra vā taṇhāya pabhāvetabbā anāgato

addhā、taṇhādayo paccuppannā、saṅkhārāvijjā 

atītoti.(《根本疏鈔》:《大疏鈔》) 

今世で造(ナ)した所の愛が、引き起こした未来の結生刹那の四食を、《食經》で言及された所の「四食」とする。

もし、その未来の結生は、三因喜俱結生であれば、それは34名法がある。あなたが願望した所の(阿羅漢果を証悟できる様にという)比丘の未来結生を目標に取る。

当該の未来結生法の中において:

1、業生色の一部分に属する業生食素は段食である。

2、結生識と相応する触は触食である。

3、結生識と相応する思は意思食である。

4、結生識は識食である。

(一)この四食は未来世の法である。  

(二)当該の未来四食の基因は、すなわち、愛等々(業有、取、愛、受、触、六処、名色と識)は現在世の法である。

(三)行と無明は過去世の法である。

この様に、未来、現在と過去の三時を含める事。

この識別方法の、その順序は、逆転していなければならない、すなわち、未来の結生に属する四食から始めて、過去世に属する無明まで、順序よくそれらの因果関係を識別するものである。

(12-1につづく)

<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>

(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は<菩提樹文庫>までお知らせ下さい。http://bodaijubunko.sakura.ne.jp/index.html

<本雅難陀尊者(Ven. U Puññānanda)著 『禅修指南』Meditation Guide 第二版  中国語→日本語 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>