南伝仏教のDhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。尚、修行については必ず経験豊富な正師について下さるようお願いします。

是誰庵仏教談義>誰が地獄に落ちるのか

私は熱心な仏教徒で、今年の年末に、できれば緬甸のパオ森林

寺院で、出家得度したいと思っている。

以前、東南アジアから日本の仏教系大学に留学して来た S. S 

という法名テーラワーダ系の比丘がいて、その彼を、 Tさん

(故人)という女性が、長年熱心に支援していた(テーラワーダ

比丘は、お金を触ってはいけないとか、戒律が大変に厳しいので、

この女性が、住居や食事、在留の申請等を含め、生活を全方位的に

支えたのである)。

有る時、何らかの事件か、何かの物事の処理の事で意見が食い違い、

齟齬が生じたらしく、お互いに売り言葉に買い言葉で(と推測する)、

何か言い争ったらしい。そうするとこの比丘が「私に反抗するなんて、

お前は地獄に落ちる」と罵ったそうだ。

くだんの女性はそれを信じてしまい、一時は自殺未遂するほどのノイ

ローゼになった。私は当時、慰めの言葉が見つからず、ただ電話口で

彼女の嗚咽を聴くのが精いっぱいだったのだけれど・・・。

そしてそれから何年か後、私にも似た体験が降りかかって来たので

ある(苦笑)。欧米に住む大乗系比丘(同じく S という)

「お前は地獄に落ちる」と言われたのだ。けれども私はノイローゼに

なんか、ならない。

仏陀は「私の言う事を聴かない者は地獄に落ちる」などと言った事

はない。仏陀は「バラモン教徒も、その他自分の中に神を信じて

いる者は、その神への信仰を捨てる必要はない(仏教徒になる事

を要請しない)」『本当の自己とは何か?』を知りたい人、この

世の普遍的真理である『無常・苦・無我』を知りたい人は、私の

ダンマを聴きなさい。そして、私の教えるサマタ・ヴィパサナの瞑想

を実践して、微細なる真理に目覚めなさい言い、多くの人を導い

たけれど、「私に盲従しなさい」とは決して言わなかった

仏陀ご本人、そして比丘・比丘尼など出家者への畏怖の念や崇敬

の心を利用して、出家者が、一般人・信徒を脅してはいけない。

仏陀のダンマを聴かなくても、神を信じても、比丘や比丘尼

宗教指導者に対して(正当な理由があって)批判しても、地獄には

落ちない。もし仏陀のダンマを聴かないならば、その人はただこの

人生において、無常とは何か、苦とは何か、無我とはなにか、が分か

らない、というだけである。

もしこの世に、本当に地獄に落ちる者がいるとしたら、それは

「地獄に落ちるゾ」と言って、法に疎い一般人や信者をだまし、

脅している、出家者(宗教的指導者)自身である。

追補:テーラワーダには聖者誹謗罪があるが、聖者が自分で「私は

聖者だから誹謗するな」と名乗ったり、脅したりするはずがない

(聖者になると森に隠遁するのは、一般人が不用意に彼を中傷しな

いように、聖者の方から身を引くのである)。

大乗には比丘誹謗罪があるらしいが、これは比丘の権威の過剰な

拡大。仏教は人を脅す宗教であってはならない。。