2014-05-20 是誰庵仏教談義>誰が地獄に落ちるのか 仏教 私は熱心な仏教徒で、今年の年末に、できれば緬甸のパオ森林 寺院で、出家得度したいと思っている。 以前、東南アジアから日本の仏教系大学に留学して来た S. S という法名のテーラワーダ系の比丘がいて、その彼を、 Tさん (故人)という女性が、長年熱心に支援していた(テーラワーダの 比丘は、お金を触ってはいけないとか、戒律が大変に厳しいので、 この女性が、住居や食事、在留の申請等を含め、生活を全方位的に 支えたのである)。 有る時、何らかの事件か、何かの物事の処理の事で意見が食い違い、 齟齬が生じたらしく、お互いに売り言葉に買い言葉で(と推測する)、 何か言い争ったらしい。そうするとこの比丘が「私に反抗するなんて、 お前は地獄に落ちる」と罵ったそうだ。 くだんの女性はそれを信じてしまい、一時は自殺未遂するほどのノイ ローゼになった。私は当時、慰めの言葉が見つからず、ただ電話口で 彼女の嗚咽を聴くのが精いっぱいだったのだけれど・・・。 そしてそれから何年か後、私にも似た体験が降りかかって来たので ある(苦笑)。欧米に住む大乗系比丘(同じく S という)に 「お前は地獄に落ちる」と言われたのだ。けれども私はノイローゼに なんか、ならない。 仏陀は「私の言う事を聴かない者は地獄に落ちる」などと言った事 はない。仏陀は「バラモン教徒も、その他自分の中に神を信じて いる者は、その神への信仰を捨てる必要はない(仏教徒になる事 を要請しない)」「『本当の自己とは何か?』を知りたい人、この 世の普遍的真理である『無常・苦・無我』を知りたい人は、私の ダンマを聴きなさい。そして、私の教えるサマタ・ヴィパサナの瞑想 を実践して、微細なる真理に目覚めなさい」と言い、多くの人を導い たけれど、「私に盲従しなさい」とは決して言わなかった。 仏陀ご本人、そして比丘・比丘尼など出家者への畏怖の念や崇敬 の心を利用して、出家者が、一般人・信徒を脅してはいけない。 仏陀のダンマを聴かなくても、神を信じても、比丘や比丘尼、 宗教指導者に対して(正当な理由があって)批判しても、地獄には 落ちない。もし仏陀のダンマを聴かないならば、その人はただこの 人生において、無常とは何か、苦とは何か、無我とはなにか、が分か らない、というだけである。 もしこの世に、本当に地獄に落ちる者がいるとしたら、それは 「地獄に落ちるゾ」と言って、法に疎い一般人や信者をだまし、 脅している、出家者(宗教的指導者)自身である。 追補:テーラワーダには聖者誹謗罪があるが、聖者が自分で「私は 聖者だから誹謗するな」と名乗ったり、脅したりするはずがない (聖者になると森に隠遁するのは、一般人が不用意に彼を中傷しな いように、聖者の方から身を引くのである)。 大乗には比丘誹謗罪があるらしいが、これは比丘の権威の過剰な 拡大。仏教は人を脅す宗教であってはならない。。