南伝仏教のDhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。尚、修行については必ず経験豊富な正師について下さるようお願いします。

パオ・セヤドー問答集~#290~299>問答(16)問16-20~16-29<戒学疑問編>10編。

☆11月より長期リトリートに入る為、公開の翻訳文が少し多くなっています。よろしくお願いいたします。

#290-151008

問16-20 禅師にお尋ねします。一日間だけ8戒を守るとして、時間はどのようにコントロールすればよいですか?ある人は、夜7時から次の夜7時まで守ると言いながら、その前にもその後にも、夕ご飯を食しています。まるで7戒を守っているように見えます。非食の時間、どのような食べ物なら食べてもよく、どのようなものは不可ですか?オートミール、牛乳、ミロ、豆乳、芋汁、コーヒー、3+1のコーヒー等、飲んでもいいのでしょうか?高くて大きなベッドとは、どういうものを言いますか?

答16-20 7戒というものは、ありません。あなたが希望するなら8戒を守って下さい。そうでなければ5戒です。8戒を守る正確な時間は、早朝から翌日の夜明けまでです。夜の7時から翌日の夜7時まで、8戒を守るのは比較的レベルの低い修行です。給孤独長者の下で働いていた雇人は、夜から始まって、半日の8戒を守っていましたが、しかし、彼はその日のお昼からすでに食事をしていなくて、たとえ餓死しても食べようとはしませんでした。

午後過ぎて食事をしないというこの戒は、在家も比丘も同じです。非時には、三種類の薬を用いる事ができます。すなわち、一日の果汁(その日に絞った果汁)、7日薬と一生の薬。一日の果汁とは、多数の果汁を含みますが、濾過されたもので、残渣がなく、加熱していないもの。ある種の果汁は許されないものがあります。たとえば、椰子ジュース、西瓜ジュース、メロンジュース等です。7日薬は五種類あります。(羊の)バター、(牛の)バター、油、蜂蜜と砂糖。一生薬とは、普通の人が食物としては食べない木の根、木の皮、木の葉等。しかし、この三種類の薬は、病気の時だけ、非時に飲む事ができます。たとえばお腹がすいた時等です。オートミール、牛乳、ミロ、豆乳、芋汁、ココア、チョコレート、ヨーグルト及び3+1コーヒーは、非時の時に飲んではいけません。スリランカとタイの仏教の伝統では、黒コーヒーは飲んでもよいです。

高いベッドとは、横木の下の脚部が仏陀の指8つ分長い物を言います。註釈によると、許された高さは、27インチですが、他の伝承では13インチであるとする場合もあります。大きなベッドとは、面積の大きいベッドを言うのではなく、ベッドの上に置く綿、ウールのクッションが4つの指の幅より厚いか、または絵柄のあるウール製の敷き布団の事を言います。

#291-151008

問16-21 5戒又は8戒を受けた後、もし、邪淫または淫を行って破戒した場合、どのように懺悔するのですか?将来、5戒又は8戒を受けたり、出家したりできますか?修行して、ジャーナと道果を証悟する事ができますか?

答16-21 懺悔する必要はありません。もう一度改めて、受戒して下さい。彼は出家してサーマネラにも、比丘にもなれますし、ジャーナも、阿羅漢果も証悟する事ができます。出家する前に多くの人を殺したアングリマーラのように、です。比丘になった後で、阿羅漢果を証悟する事も可能です。

#292-151008

問16-22 四根本戒の一つを違反した比丘が、居士になった後、5戒又は8戒を受ける事はできますか?もし修行するならば、ジャーナと道果を証悟する事はできますか?

答16-22 彼は5戒又は8戒を受ける事ができます。もし修行するならば、ジャーナと道果を証悟する事ができます。

#293-151008

問16-23 すでに波逸提罪を犯してしまった比丘は、戒を受けてサーマネラになる事はできますか?

答16-23 もし彼が波逸提罪を犯した後、即刻当該の罪を告白したならば、彼は戒を受けてサーマネラになる事はできます。ただし、もし彼が当該の罪を一定期間隠し、かつ誦戒(の儀)等に参加したならば、彼は、戒を受けてサーマネラになる事はできません。

#294-151008

問16-24 もし、比丘または比丘尼が、僧残罪を犯した後、一人の比丘または比丘尼に当該の罪を告白したものの、いまだ摩那埵及び出罪(罪を許してもらう事)をしていないとして、その場合、修行をしてもジャーナと道果を証悟できない、という事はありますか?

答16-24 できません。彼(彼女)がすでに別住または摩那埵を実行した後ならば、ジャーナと道果を証悟する事はできます。

#295-151008

問16-24 もし、比丘または比丘尼が、僧残罪を犯した後、一人の比丘または比丘尼に当該の罪を告白したものの、いまだ摩那埵及び出罪をしないまま還俗してしまいました。この場合、このような人は、5戒か、または8戒を受ける事ができますか?修行をしても、ジャーナと道果を証悟できないという事はありますか?

答16-24 彼(彼女)は5戒または8戒を受ける事ができます。もし修行するならば、ジャーナも道果も証悟する事はできます。ただし、彼が改めて戒を受けたとしても、以前に犯した僧残罪は依然として有効で、故に彼は別住又は(別住と)摩那埵の二つを、実行しなければなりません。もし、以前に当該の罪を隠すような事をしていなければ、摩那埵だけを実行すればよいです。

#296-151008

問16-26 五逆の罪を犯した者は、5戒または8戒を受ける事はできますか?

答16-26 できます。アジャセ王がそのよい例です。彼は父親殺しの罪を犯しましたが、その後に敬虔な仏教徒になり、5戒を受けて、守りました。

#297-151008

問16-27 禅師。慈悲で私の疑問と不安を解いていただけますか?禅の修行をしている時、過去に行った罪業によって、業処に専注する事ができません。私は今、どうしていいか分かりません。私は大罪を犯した極悪の凡夫で、救う薬もなく、止観の修行と無縁のように思うのです。禅師、私は止観の修行をやってもよいのでしょうか?道果と涅槃を証悟する事ができますか?私の心内の結(結び目)は、どのようにすれば、取り除く事ができますか?

答16-27 もし、かつて五逆の罪の一つを犯していないならば、あなたは今世で禅の修行を成就する事はできます。

《相応部註》に、ミラカ(Milaka)の物語があります。ミラカは猟師でした。ある日、彼は森の中で猟をしていた時、喉の渇きを覚え、一軒の寺院を見つけ、水を求めて、入って行きました。木の下に置いてある水瓶を見ると中は空っぽでした。その時、一人の大長老が寺院の庭を掃除しているのが見えたので、彼は行って大長老に言いました:「比丘、あなたは他人が供養したものを食べているのに怠け者で、水瓶に水も入れておかない」と。これを聞いて、大長老は大変に訝りました。というのも、彼は庭の掃除を始める前に、水瓶一杯に水を満たしておいたからです。彼は水瓶の前に行って、水瓶の中に水が一杯あるのを確認しました。その時、彼はすぐさま、シャーリプトラ尊者の弟子のローサカティッサ(Losakatissa)の事を思い浮かべました。

カッサバ仏の時代、ローサカティッサは、ある一人の施主が阿羅漢に供養した食べ物を、怒りに任せて捨てました。この悪業のせいで、彼は死後地獄に生まれました。地獄から離れた後、ある漁村の漁師夫妻の胎内に宿りました。彼が受胎したその時から、村全体のすべての漁師が、魚が獲れなくなりました。彼が7歳の時、母親は彼を家から追い出しました。シャーリプトラ尊者は、この貧しい男の子を見て、サーマネラにしました。十分な波羅蜜があった為に、ローサカティッサ尊者は、阿羅漢になりました。しかし、彼は充分な食物を得られた例がありませんでした。托鉢の時に、信徒が供養した食べ物は、彼の鉢に入るや否や、自動的に無くなってしまうのです。

ある日、シャーリプトラ尊者は、ローサカティッサ尊者が、今日般涅槃する事が分かりました。そして、般涅槃の前にお腹一杯食べさせてあげたいと思いました。そこで、托鉢を終えたシャーリプトラ尊者は、彼に食べさせる為に、鉢の中の食物を僧院に持って帰りました。しかし、これらの食物は、一たびローサカティッサ尊者の鉢の中に入れると、消えて無くなってしまうのでした。シャーリプトラ尊者はもう一度托鉢に行き、蜂蜜、砂糖、ゴマ油やバターでできた薬などを貰って来ました。僧院に戻ると、シャーリプトラ尊者は、食物や薬が二度と無くならないように、自分の鉢を手で掴んで離さないでいました。こうして、シャーリプトラ尊者は、ローサカティッサ尊者に、直接自分の鉢から食物を取るようにさせ、彼は、一生の内たった一回、初めてお腹一杯食べたのでした。食事をした後ほどなくして、ローサカティッサ尊者は般涅槃したのでした。

水瓶に一杯水があるのを見て、大長老はすぐさまローサカティッサ尊者の話を思い出し、彼は手で水瓶を掴んだまま、ミラカに水を飲ませました。この様子を見て、ミラカは恐れ慄き、すぐに大長老の下で出家してサーマネラになりました。修行している時、彼は以前彼が殺した動物と、自分が使っていた武器のイメージが見える為、修行に専念する事ができませんでした。

彼が戒師に還俗したいと申し出た時、大長老は、多くの水分を含んでいる巴楽(グァヴァ)の木を拾ってこさせ、それを大理石の上に載せて、焼くように言いました。しかし、サーマネラがいくら頑張ってもそれらの木に火が付きません。その時、大長老が神通を使って地獄から少しの火を貰ってきてサーマネラに見せ、その火を木の上に置いて、材木を燃やして灰にしました。彼はサーマネラに向かって言いました。:「もし、君が還俗するならば、この地獄の火は君の行くべき所だ。もし君があの地獄に生まれ変わりたくなければ、止観の修行に精進しなければならない」と。地獄の火を恐れたサーマネラは、二度と還俗したいと思わなくなりました。彼は麻で縄を綯い、それを自分の頭に括り付け、膝から下を甕の中の水につけ、修行に励みました。時には、彼は夜中にも経行をしました。彼はこのように止禅と観禅(vipassanā)に精進したので、阿那含道果を証悟しました。

このように、もしあなたが修行に精進するならば、あなたもまたジャーナと道果を証悟する事ができます。

#298-151008

問16-28 白衣居士は、阿那含果を証悟する事ができますか?阿羅漢を証悟したいのであれば、どのような条件の下で修行する必要がありますか?阿羅漢を証悟した居士は、出家衆に礼拝されてもよいですか?

答16-28 在家者でも阿羅漢果を証悟する事はできます。たとえば、仏陀の父親のスッドーダナ王は在家の身分で阿羅漢果を証悟しました。しかし、阿羅漢果を証悟した在家者は、阿羅漢道果を証悟した当日、出家しなければなりません。そうでなければ、彼は必ず、その日、般涅槃するでしょう。

#299-151008

問16-29 凡夫比丘はすでに阿羅漢果を証悟したサーマネラに礼拝する必要がありますか?

答16-29 いいえ。阿羅漢サーマネラは、凡夫比丘を礼拝しなければなりません。というのも、比丘は増上戒(adhisīla)を保っているからです。

(翻訳文責 Pañña-adhika sayalay)

初めてご来訪の方へ:上記は、台湾より請来した「禅修問題与解答(パオ禅師等講述)」(中国語版)の翻訳です(仮題「パオ・セヤドー問答集」)。「智慧の光」「如実知見」の姉妹版として、アビダンマ及びパオ・メソッドに興味のある方のご参考になれば幸いです。(一日又は隔日、一篇又は複数篇公開。日本及び海外でリトリート中はブログの更新を休みます。Idaṃ me puññaṃ nibbānassa paccayo hotu)。