《忍辱行者本生経》の中において、我らの菩薩が、ある一世に
おいて、忍辱行者(Kantivadi)であった時の、彼の模範的な
忍辱についての物語が、書かれている。
ある日、カラブ(Kalabu)王、すなわち、未来のディバダッタは、
多くの男女の侍者の随行の下、王家の公園に向かった。
暫くの間遊んだ後、彼は疲れを感じて、眠った。
国王に従う必要がなくなったので、皇后以外の、その他の
侍女たちは、全員、王家の公園の中で説法している忍辱隠士
の所へ行った。
国王が目を覚ますと、皇后以外、すべての侍女がいない事に
気が付いた。そして、皇后にどういう訳かと聞いた。
事情を知って後、彼は隠士に非常に嫉妬し、憤怒し恨んだ。
彼は隠士の所へ行き、何を教えているのか、と訊ねた。
その隠士は国王に、自分は忍辱を教えているのだと言った。
国王は、即刻、人に命じて、鞭打たせ、全身血だらけになった
所で、もう一度、何を教えているのかと、訊ねた。
その隠士は答えた:
「陛下、私が教えているのは忍辱でございます。そして、
貴方様は、私の忍辱が、皮膚の表面ほどに浅いものと
お考えでしょうか?」
それを聞いた国王は、更に怒りに燃え、人に命じて、
その鼻と耳を切り落とさせた。
そして、その後に、もう一度、何を教えているのかと、
訊ねた。
その隠士は答えた:
「陛下、私が教えているのは忍辱でございます。そして、
貴方様は、私の忍辱が、鼻と耳にあると、お考えでしょうか?」
次に国王は、人に命じて、その両手と両足を切り落とさせた。
その隠士は以前と同じように、国王は、忍辱が、手と足に
あると思っているのかどうかと、問うた。
隠士が自分の思い通りにならないと知った国王は、
怒りでもって、彼の胸を一蹴りし、どこかへ行ってしまった。
国王が去った後、その時は将軍であった、未来のシャーリプトラ
が隠士に、国王の愚かさをについて、許しを乞うた。
忍辱隠士は、すぐさま答えた:
「私は国王に対して、毛筋一本程の瞋恚も怨恨もありません。
実際、私は、彼の幸福と長寿を祝福しているのです。」
このように、国王の罵りを受けても、命令された人によって、
鞭打たれ、鼻を削がれ、耳を切られ、四肢を切断され、
死ぬほどの虐待を受けても、彼は決して怒ることなく、
忍辱の時において、慈愛に満ちていたのである。
我々の菩薩は、人であった時に、この種の高度の忍辱を
修行できただけでなく、動物に生まれた時であっても、
同じくこのように修行したのである。
《大迦比本生経》(Mahākapi Jātaka)の中で、
一匹の猿に生まれた菩薩は、深い穴に落ちた婆羅門を
救うために、全身の力を使い尽くし、その為に疲労し、
また警戒心がなかったので、その人の身体の上で眠
ってしまった。
心が毒悪な婆羅門は、目が覚めた後、彼の命を救った
猿を、飢えを満たす食べ物とみなし、全くの感謝の
気持ちなく、石でもって、その猿の頭を殴ったのである。
しかし、菩薩は一筋の瞋恚と怨恨の心無く、黙々と、
頭にできた傷に耐え、その人が野獣に襲われる危険から
脱出できるように、その後も、手助けしたのである。
最後に、猿は、木の上から飛び降りて、血を滴らせる
方法によって、森林を抜け出す道を示した。
これが、菩薩が如何にして忍辱を修習するのか、
という方法である。
もし、あなたが菩薩になりたいのであれば、
あなたはこの例を模範にして、実践するべきである。
(+ )(= )訳者。(つづく)
(<パオ・セヤドー講述「菩提資糧」>(1999年版)
中国語版→日本語 翻訳文責Pañña-adhika sayalay)