翻訳『禅修指南』13-9(455/520)
<Idaṃ me puññaṃ nibānassa paccayo hotu>
《生滅随観智》(Upayabyayañāṇa)
名色法と五蘊法の二者
生滅随観智の目標は蘊、処、界、諦、縁起支である。
縁起支においては、ただ、無明から有(bhava)までが、生滅随観智の目標の内である、とされる。(《無碍解道》)。
生滅随観智を証得したいと思う人は、先に(下記の如くに)徹底的に、現在の(名色)の三相、ある時は無常相を観じ、ある時は苦相を観じ、ある時は無我相を観じなければならない。
1、内外を交代しながら、ただ色のみを観ずる;
2、内外を交代しながら、ただ名のみを観ずる;
3、内外を交代しながら、同時に名色の二者を観ずる;
ただ色法だけを観ずる、または一つひとつの所縁グループ(六グループの修習を完成しておく事)の名法を観ずる時、いまここの刹那(khaṇa paccuppanna)を、観ずる様にしなければならない。
同様に、五蘊法に基づいて、徹底的に観の修習を実践し、ある時は無常相を観じ;ある時は苦相を観じ;ある時は無我相を観ずる。
(以下の)いまここの刹那を観照できるまで修習する:
1、色のみ。
2、受のみ。
3、想のみ。
4、行のみ。
5、識のみ。
ある時は、内観し、ある時は、外観する。
同様に、諸々の縁起支、すなわち、無明、行、識、名色、六処、触、受、取、有(業有と生有)の生・滅を目標に取り、順序良く繰り返しそれらの三相を観照する。
ここでは、ただ、それらの三相の生・滅を目標に取るのみであり、それらの因果関係を、連貫させる事はない。
《過去、未来、現在、内、外》
もし、禅修行者が徹底的に、現在の行法を観照して、いまここの刹那に到達し、かつ、その智が、非常に明晰であるならば、彼は、名色法と五蘊法を用いて、(己自身が見える事のできる)最も遠い過去世から今生まで、次に、最後の一個の未来世まで、内外、交代して、順序良く、以下の三相を観照する。
1、色のみ。
2、名のみ。
3、名色の二者。
その後に、
1、色のみ。
2、受のみ。
3、想のみ。
4、行のみ。
5、識のみ。
を観照する。
無常を多数回観照し、苦を多数回観照し、無我を多数回観照する事。
この様に多数回観照したならば、禅修行者は、相当長い時間をかけて、ただ最も己自身に適合する所の相を、観ずるのがよい。
もし、禅修行者が、已の(+修習に)満足を覚えたならば、(+その段階において)生・滅が、極めて迅速に、その智に、顕現する。
そして彼は、已に、いまここの刹那に到達しているために、彼は、生滅随観智の詳細法に転じて、修習することができる。
《生滅随観智の詳細修習法》
(一)随観集法(samudayadhammānupassī)
=見生起(udayadassana)=生起だけを観ずる
《大念処經は》以下の様にに教える。一つひとつの念処に対して、以下の三法を運用して、修習する事:
1、随観集法(samudayadhammānupassī)
2、随観滅法(vayadhammānupassī)
3、随観集滅法(samudayavayadhammānupassī)
智慧第一のシャーリプトラ尊者は《無碍解道》の中において、それを解釈するに、「無明の修、色の集徹底的」とした。
禅修行者は、これらの指示に従って、生滅随観智の詳細法を修習しなければならない。
ここにおいて、結生時の色蘊と四つの名蘊を例に説明する。已に縁起第五法の修習を終えている禅修行者は、一つひとつの心識刹那の五蘊(たとえば、名業処の表の如く)を観照することができる。
縁起第五法の様に、ここでは、智でもって因果関係を知見しなければならない。
色蘊:
1、無明(20)が生起するが故に、(業生)色が生起する。
2、愛(20)が生起するが故に、(業生)色が生起する。
3、取(20)が生起するが故に、(業生)色が生起する。
4、行(34)が生起するが故に、(業生)色が生起する。
5、業(34)が生起するが故に、(業生)色が生起する。
(業生色の生起)
6、心が生起するが故に、心生色が生起する。(心生色の生起)。
7、時節が生起するが故に、時節生色が生起する。(時節生色の生起)。
8、食が生起するが故に、食生色が生起する。(食生色の生起)。
註:結生の時には、業生色しか存在しない。特に、結生の生起刹那の、その時には、心生色、時節生色と食生色はいまだ存在していない。ここでは、比較的後の心識刹那の色蘊を列記した。
結生受蘊:
1、無明(20)が生起するが故に、結生受蘊が生起する。
2、愛(20)が生起するが故に、結生受蘊が生起する。
3、取(20)が生起するが故に、結生受蘊が生起する。
4、行(34)が生起するが故に、結生受蘊が生起する。
5、業(業力、34)が生起するが故に、結生受蘊が生起する。
6、依処(心所依処)が生起するが故に、結生受蘊が生起する。
7、目標(結生心の目標)が生起するが故に、結生受蘊が生起する。
8、触(=34-受=33)が生起するが故に、結生受蘊が生起する。
(結生受蘊の生起)
結生想蘊:
1、無明(20)が生起するが故に、結生想蘊が生起する。
2、愛(20)が生起するが故に、結生想蘊が生起する。
3、取(20)が生起するが故に、結生想蘊が生起する。
4、行(34)が生起するが故に、結生想蘊が生起する。
5、業(業力、34)が生起するが故に、結生想蘊が生起する。
6、依処(心所依処)が生起するが故に、結生想蘊が生起する。
7、目標(結生心の目標)が生起するが故に、結生想蘊が生起する。
8、触(=34-受=33)が生起するが故に、結生想蘊が生起する。
(結生想蘊の生起)
結生行蘊(=思、第一番目の解説方法)
1、無明(20)が生起するが故に、結生行蘊が生起する。
2、愛(20)が生起するが故に、結生行蘊が生起する。
3、取(20)が生起するが故に、結生行蘊が生起する。
4、行(34)が生起するが故に、結生行蘊が生起する。
5、業(業力、34)が生起するが故に、結生行蘊が生起する。
6、依処(心所依処)が生起するが故に、結生行蘊が生起する。
7、目標(結生心の目標)が生起するが故に、結生行蘊が生起する。
8、触(=34-思=33)が生起するが故に、結生行蘊が生起する。
(行の生起)
結生行蘊(34-受ー想ー識=31、二番目の説明方法):
1、無明(20)が生起するが故に、結生行(ママ、以下同様)が生起する。
2、愛(20)が生起するが故に、結生行が生起する。
3、取(20)が生起するが故に、結生行が生起する。
4、行(34)が生起するが故に、結生行が生起する。
5、業(業力、34)が生起するが故に、結生行が生起する。
6、依処(心所依処)が生起するが故に、結生行が生起する。
7、目標(結生心の目標)が生起するが故に、結生行が生起する。
8、その他の三名蘊が生起するが故に、結生行が生起する。
(行の生起)
その他の三名蘊とは受蘊、想蘊と識蘊である。34名法の中において、この三蘊を除いて、残りの31心所は果であり、残りの三名蘊は因という事になる。
結生識蘊:
1、無明(20)が生起するが故に、結生識が生起する。
2、愛(20)が生起するが故に、結生識が生起する。
3、取(20)が生起するが故に、結生識が生起する。
4、行(34)が生起するが故に、結生識が生起する。
5、業(34)が生起するが故に、結生識が生起する。
6、名色が生起するが故に、結生受蘊が生起する。
(結生識の生起)
名=心所依処(30色)+所縁色(所縁色が色法である場合)。
この観法に基づいて、一つひとつの心識刹那の五蘊を観照する。たとえば、有分五蘊、死亡五蘊、五門転向五蘊、眼識五蘊などなど。
縁起第五法の因果関係の識別に熟練している禅修行者には、この観法は、通常、難しいものではない。
註:ここにおいて、無明、愛、取を(20)及び行為(34)としたのは、一つの例に過ぎない。己自身の名色流の中において、已に生じた、まさに生じている、将に生じんとしているものを観じる様にすればよい。
心と心所の数量は、変化する時もあり、それはまた、善行であったり不善行であったりする。出来る限り、最も遠い過去世から(+始めて)最後の一個の未来世まで、多数回、観照の修習を実践する事。
(13-10につづく)
<Mama puññabhāgaṃ sabbasattānaṃ bhājemi>
(+ )(= )訳者。句読点等原文ママ。★誤字脱字を発見された方は<菩提樹文庫>までお知らせ下さい。http://bodaijubunko.sakura.ne.jp/index.html
<本雅難陀尊者(Ven. U Puññānanda)著 『禅修指南』Meditation Guide 第二版 中国語→日本語 翻訳文責 Pañña-adhika Sayalay>