Sayalay's Dhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。

四無量心>還暦おばんの仏教談義―170

最近、ブログ仲間がウペッカ(捨心)について書いていましたので、私も四無量心について書いてみます。

仏陀の教えた四無量心とは「慈(メッター)」「悲(カルナー)」「喜(ムディタ)」「捨(ウペッカー)」の四つの心の事です。

「慈」は、母親が一人子をいつくしむような心、と説明されます。

「悲」は、相手の欠点、過失を容赦なく指摘し、直してあげようとする厳父のような心と説明されます。

「喜」は相手の喜びを、我が喜びとする心。すなわち一点の嫉妬もない心。これは難しいですね。尊敬する上司が昇進した、家を買った。これ、嬉しいです。けれど、同期(または後輩)が自分より先に昇進した、家を買った、自分の恋人に横恋慕して、あっと言う間にゴールインしちゃった・・・ちょっと笑っていられないですよね。

「捨」は、すべての命、出来事を平等であるとみなして、いつも冷静である事。川岸で鳥が魚を狙っているとして、魚の為に鳥を追い払えば鳥が餓死し、鳥の為に魚を捕りやすくしてあげれば、魚が絶命する・・・どちらに味方しても不公平である時、捨の心を働かせなさい、といいます。以前ブログに書いた<カエサルのものはカエサルに>は、捨心ですね。相手の業によって事件が起こっている時、必要以上に干渉しないで、その人がどのように解決するか見ていてあげる。この「ただ見ていること」は、実はとてもエネルギーが必要で、難しいのです(河合隼雄さんの心理学の本など読めば、この辺の話がイキイキと書いてあります)。

四無量心の中では「捨」が一番難しいと言われます。まず「慈」から始めると、徐々に四つともできるようになるようです。仏教は、その説かれる順序にも意味がある、という事でしょうか。