問6-11:一人の、精神異常者、幻聴のある者、脳疾患を患う者、中風または大脳神経失調症の者は、この種の法門を修行することはできますか?もし、可能であれば、どの様な注意点がありますか?
答6-11:この種の人々は、禅の修行はできる。しかし、通常は、あまり成功しない。というのも、彼らは、充分に長い時間専注することができないが故に。
「充分に長い時間」とは、一人の人間の専注力が強くて力のある時、それが数時間維持できる事をいい、また、多くの回数座れなければならない。
この種の人間の専注力は、通常、不安定であり、これが問題である。
もし、彼らが、数多くの回数、数日、数か月座ることができて、彼らの専注力が維持できるならば、成功する可能性もあるかも知れない。
パターチャーラーの物語は、有名な例である:
彼女の夫、二人の子供、父母と兄弟は、同じ日に死亡し、その事によって、彼女は悲哀の為に発狂し、裸で四方八方彷徨って歩いた。
ある日、彼女は仏陀が説法をしている沙瓦提城の掲徳林に来たが(この時)、彼女の前世において累積したハラミツが熟した。
そのことが原因で、また同時に、仏陀の慈悲によって、彼女は敬虔な態度で仏法を聞くことができた。
彼女の心は、徐々に落ち着いて来て、かつ、法を領悟した。
彼女は非常に速くに、入流者(Sotāpana)に成った。
彼女は出家して比庫尼となり、引き続き禅の修行をして、彼女の定力と観智を維持した。
ある日、彼女の禅修行のハラミツが熟し、五種類の世間神通と四無礙解智<注346>を具備する阿羅漢になった。
比庫尼サンガの中において、彼女は戒律に一番に精通していた。彼女は、厳格に戒律を守り、義注を含め、戒律を熱心に学んだ。
勝蓮華仏(Padumuttara Buddha)の教法の時代から、カッサパ仏(Kassapa Buddha)の教法の時代まで、彼女は、ハラミツの累積を実践しつづけた。特に、カッサパ仏の教法の時代、当時、彼女はキキー王(Kikī)の娘であって、彼女は、童真梵行(komāribrahmacariya)を、二万年の長きにわたって守った。童真梵行とは、五戒の事を指し、その中の離欲邪行学処を、完全な梵行を守る事に替えた。
彼女は、在家居士の身分のまま、戒(sīla)、定(samādhi)、慧(Paññā)の三学を、二万年の長きにわたって育成した。
これらのハラミツは、果徳瑪仏(ゴータマ仏陀)の教法の時代において、熟したのである。
こうしたことから、彼女は発狂したことがあるが、理智を回復し、三学を善く学び、阿羅漢を証悟したのである。
この種の人々が、禅の修行を実践する時、kalyāṇamitta(善友)、すなわち、良い指導者、良い友人及び良い修行仲間が必要であり、また、適切な薬物、適切な食物もまた、大きな助けになるものである。
しかし、我々の経験によると、彼らの大多数の人々は、長時間の専注を維持することが出来ず、(修行に)成功することは、難しい。
<翻訳文責:緬甸パオ森林僧院/ヤンゴン分院所属/Pañña-adhika Sayalay般若精舎>