南伝仏教のDhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。尚、修行については必ず経験豊富な正師について下さるようお願いします。

テーラワーダ比丘の戒律ーお金とカードの取り扱いについて

ブログの読者の方から「テーラワーダの比丘は、カードで買い物をしていいのですか?」という質問を頂きました。

私はテーラワーダの女性出家者で、sayalayという身分で日本で庵を結び、戒律は、8戒を受けています(パオ本山にいた時は、10戒)。

通常、出家の女性、在家の女性共に、緊急の用事でもない限り、比丘の住居に近づく事はありませんので、私が、比丘の生活内容を全部把握している、という訳ではありません。

ですから、以下に書きます事は、私の知る範囲内、見た範囲内であり、また、タイと緬甸(ミャンマー)の寺院では、それぞれ内規が異なりますので、戒律の守り方が寺院によって、異なる事を前提として、以下のお話は、ご参考程度に留めて頂きますようお願い致します。

(1)比丘は、お金(現金)を直接所持する事はできません。在家から現金によるお布施があった時、「カッピヤ」(浄人)という名の侍者(在家)が、代わりに受取り、保管します。

比丘がそのお金で何か買いたいと思った時「カッピヤよ。あのお金で〇〇を買って来て下さい。」と言います。カッピヤが買いに行き、物だけ比丘に渡し、お釣りがある場合は、カッピヤが引き続き保管します。

(2)緬甸(ミャンマー)で、外国人比丘が、ご自身の銀行口座(多分、母国で入金しておいたもの)から、ATMで現金を引き出しているのを、見た事があります。寺院生活の足しにするのだと思います(外国人比丘は、留学先の寺院で、お金でのお布施を貰えない場合が多いので)。

外国人比丘も、銀行・ATMでお金を引き出す為に外出する時は必ず、カッピヤを同伴します。

自分の口座から引き出した自分のお金であっても、比丘は決して現金には触らず、カッピヤが預かり、保管します。外国人比丘の欲しい物品を、カッピヤが頼まれて買いに行くのは(1)と同じです。

(3)比丘がクレジット・カードで買い物していいかどうか、よく分かりません。

在家が比丘に「〇〇円の範囲内で、好きなものを買ってもよいです」「〇〇円の範囲内で、△△を買ってもよいです」と言って、クレジット・カードを一枚渡し、比丘は、買い物が済めばカードを返すという事であれば、現金のお布施と余り変わりがなく、許容範囲なのかも知れません(推測です)。

現在、カードの発達しているタイでは、比丘のカードの扱い方に苦慮しているようです。

(4)実例を一つ。

タイの森林派のテーラワーダ比丘(日本人)が日本に帰って来た時、関西(自宅)から九州別府港に船で行った場合。

自宅から大阪南港までの近郊電車(少額運賃)はSUICAを使って、ご自分で切符を買って乗車。SUICAのチャージは在家のお布施。

南港から別府港までの船賃は、片道1万円で、これは戒律では高額運賃と見做され、自分で(SUICAを使って)買う事は出来ない。

彼を別府に招待した在家にその旨を伝え、在家に切符を買って貰って、事前に切符を郵送してもらうか、在家がITで買って、メール送信し、比丘は乗船窓口で、携帯画面(乗船切符購入済み画面)を見せて乗船する。

この比丘の説明では、自分の手で、直接現金に触れたり、持ったりする事は絶対にないが、自宅の近郊周辺移動の為にSUICA、それに類するカードを使うのはOK(事前に在家にチャージしてもらっておく)。

クレジット・カード、その他のカードで飲み物、食べ物を買うのはNO。新幹線、船賃など高額な運賃の切符は、自分では買えない。在家のお布施が頼り、との事でした(この比丘一方の証言。他の比丘はどうなのかは、私は知りません。)

タイの森林派とタンマカーイ派(町派)では異なりますし、お寺によっても内規、細部は異なります。

タイと緬甸(ミャンマー)ではまた、異なります。緬甸はまだカード社会ではないので、比丘によるカード問題は、今の所、大きな問題とはなっていませんが、いずれ、サンガによる統一見解など出されるかも知れません。

緬甸のパオ森林寺院は、戒律が特に厳しいです。パオ・セヤドーは、比丘がお金に触る事、厳禁です。

比丘の戒律違反を見たら、在家でも届出る事は出来ます(私はタイで、戒律違反しそうになった比丘に、在家が注意をする場面を、何度も見ています。)

より詳しくお知りになりたい方は、タイに「ナーワコワーダ」という出家した僧王が編集した戒律解説書がありますので、是非研究されて下さい。 

         <緬甸パオ森林寺院/ヤンゴン分院所属/Pañña-adhika Sayalay>