南伝仏教のDhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。尚、修行については必ず経験豊富な正師について下さるようお願いします。

翻訳『親知実見』#43-15

問6-12:人間関係が上手くいかない人でも、第四禅に到達することに成功したならば、彼の、他人の付き合い方が、改善されることがありますか?

ジャーナに到達すると、この種の問題を改善することが出来ますか?

答6-12:これらの問題は、通常は、瞋(dosa)によるもので、これは、五蓋の一つである。人間は、この種の態度を改めないならば、ジャーナを証悟することはできない。

もし、彼が、この種の態度を改めることができるならば、彼は、ジャーナを証得することができるだけでなく、道果、また阿羅漢まで、証悟することができる。

一つの有名な例は、チャンナ長老(Channa Thera)である。

彼と我々の菩薩は、同一の日に、カピラヴァッツゥ(Kapilavatthu)の浄飯王(Suddhodana)の王宮で生まれた。

彼は、浄飯王の女奴(女奴隷)の息子であった。

幼い時、彼はシッダッタ太子の遊び友達であったが、この事は、後々になって、彼の心に、非常に大きな傲慢の心が生まれることになった。

彼は、常にこの様に思った:

「これは私の国王、仏陀は私の遊び友達、法は我々の法、彼が俗世を離れて出家する時、私は彼に付き従って、アノーマー(Anomā)の河畔まで行ったが、この様にした者は、私以外、誰もいない。

シャーリープトラとマハーモッガラーナ等も、後になって花開いただけではないか・・・。」

こうしたことから、彼は常に、言葉粗く、シャーリプトラ尊者、マハ-モッガラーナ尊者とその他の大長老を尊重することがなかった為に、彼と友好関係を築こうという人間は皆無であった。

仏陀在世の時代、彼は、未だジャーナまたは道果を証得することができなかったが、それは、彼が、傲慢と瞋恨を取り除くことができなかった故である。

仏陀が般涅槃する夜、仏陀は、アーナンダ尊者に、チャンナ尊者に対して、梵罰(brahmadaṇda)、すなわち、誰ひとりとして、チャンナ尊者と会話してはならない、たとえ彼が自ら人と対話したがっていたとしても、という罰を実行する様、委託した。

誰も彼と会話しなくなった時、彼の傲慢と瞋恨は消失した。この種のサンガカンマ(saṅghakamma)は、仏陀般涅槃五か月の後、コーサンビー(Kosambī)のゴーシターラーマ(Ghositārāma)において行われた。

チャンナ長老は、ゴーシターラーマを離れ、バラナシの近くの鹿野苑の仙人落処に行った。

彼は、禅修行に精進したが、どの様に努力しても、成就することが出来ない。

故に、ある日、彼はアーナンダ尊者の所へ行って、助けを乞うた。

彼はなぜ、成就することができない?

彼は、五蘊の無常・苦・無我の本質を観照したが、縁起(paṭiccasamuppāda)を識別することを欠いていた。

故に、アーナンダ尊者は、如何にして縁起を識別するかを教え、かつ、《カッチャーナゴーッタ 経》(Kaccānagotta Sutta)<注347>を教導した。

アーナンダ尊者の法話を聞き終わると、チャンナ尊者は入流道果を証悟した。

彼は引き続き修行して、非常に速くに、阿羅漢を証悟した。

こうしたことから、一人の人間が、己自身の悪劣な性格を改め、止観(サマタ・vipassanā)を正確に修習するならば、ジャーナ、聖道と聖果を証得することができる(事が分かる)。

<翻訳文責:緬甸パオ森林僧院/ヤンゴン分院所属/Pañña-adhika Sayalay般若精舎>