最初の日、大黄金は、自分の食べ物を取りに行った時、自分の分が
ないのに気がついた。
彼は、当直の人が忘れたのだろう、と考えので、特に何も言わずに、
住居に戻って、禅の修行を続けた。
次の日、彼は又、自分の食べ物を得る事が出来なかった。
彼は、誰かが彼の事を、何かいけない事をしでかしたのだと
誤解して、わざと食べ物をよこさず、罰しようとしているのだ
と思ったので、最初の日と同じように、沈黙を守った。
三日目もまた、彼は自分の食べ物を見つけることができなかったので、
もし、彼に間違いがあるのならば、他の人々に謝らなければならない、
と考えた。
それで、夕暮れの時に、鼓を鳴らして人々を集めて言った:
「どうして君たちは、私に食物を分けてくれないのか?
もし、私が何か間違いを犯したならば、どうか教えて欲しい。
私はあなた方に謝りたいので。」
二番目の弟は、身を起こして大黄金に敬礼すると、
「お兄さん、少し話させて下さい」と言った。
大黄金の許可を得て、彼は宣言した「お兄さん、もし私があなたの
食べ物を盗んだのならば、今すぐ、私に馬、牛、銀、金と一人の
綺麗な妻を擁するようにして、家人と一緒に住み、世俗の生活を
思いっきり享受させて下さい。」
この種の宣誓は、もし我々が、未だ欲楽に執着しているのであれば、
それを失った時、苦痛を感じるであろう、と言う事を意味している。
この種の宣誓は、欲楽への嫌悪を表している。
大黄金は言う:
「あなたは已に、非常に厳粛な誓いを立てた。私はあなたが、
私の食べ物を盗っていないと、信じます。あなたは座ってよいです」
その他の人々は耳を塞いでこう言った:
「お兄さん、そのように言わないで。あなたの話は、深刻で、
恐ろしいです」
彼らが耳を塞いだのは、禅の修行者である彼らにとって、
欲楽は厭うべきものとして、感じられるからである。
欲楽というのは、彼らが、欲楽の話を聞きたくないと思うほどに、
恐ろしいものなのだ。
次の弟が言う:
「大黄金、もし私があなたの蓮根を盗ったのならば、花で飾り、
香水を塗り、多くの子どもを持ち、欲楽に非常に沈潜し、
かつ、非常に執着する人間になります」
このようにして、残りの8人も、似たような宣誓をした。
この物語において、大黄金隠士とは、すなわち、我々の菩薩であり、
その他の人々は、未来の大弟子である。
これは、我々の菩薩およびその追随者が、どのようにして出離波羅蜜
を修習したか、という物語である。
(+ )(= )訳者。(つづく)
(<パオ・セヤドー講述「菩提資糧」>(1999年版)
中国語版→日本語 翻訳文責Pañña-adhika sayalay)