南伝仏教のDhamma book

長年、当ブログにおいて逐次公開しましたテーラワーダ系仏教書翻訳文は、<菩提樹文庫>にてPDF版として、正式に公開されています。<菩提樹文庫>WEBをご閲覧下さい。尚、修行については必ず経験豊富な正師について下さるようお願いします。

(新)般若の独り言~パオ・メソッドについて

今、仏陀の教えがお好きな方々の中で、緬甸の高僧パオ・セヤドーが提唱されたパオ・メソッドが人気です(アメリカ、ヨーロッパを含む、全世界において)。

しかし、パオ・セヤドーご本人は、ご自分の提唱する修行方法を、パオ・メソッドと呼ばれるのを嫌っています。

彼は言います:

「私は、忘れられていた仏陀の瞑想法を復興しただけ」

「偉大なのは仏陀その人だ」と。

 

パオ・セヤドーは、「サマタに沈潜することなく、vipassanaをせよ」という仏陀の教えを、文字通りにそのまま受け取って、サマタの修行を省略したまま、素の意識のままか、または遍作定または近行定などの、ゆるい定の意識状態で行う観察を vipassana だと主張していた当時の緬甸仏教界の風潮(=ラベリング修法)に疑問を感じ、経典と清浄道論を持って一人で森林に入り、仏陀の教えた修法を一つ一つ確認・実践し、仏陀の本当の教え、本当の修法を復興していき、結果、現在パオ・メソッドと呼ばれる修法を、確立したのだそうです。

緬甸から離れて遠く日本にいると、パオ・セヤドーの復興した仏陀の教法(色聚、すなわち、クオークの性質とその分裂を観察する事及び縁起、すなわち、意識を意門に集中することによって、過去世を追尾、確認する修法)が、非常に神秘的に思えて、パオの旗を振る指導者に酔心してしまう人々を多く見かけますが、仏陀の教法・・・パオ・メソッドは、決して神秘でもなんでもありません。

毎日コツコツ、安般念瞑想をされて、何時の日か、ご自身の吐く息の中の火界が見えるようになったなら(これが禅相nimitta)、必ず名色分別智、縁起へと進む事ができ、やがては阿羅漢になる事ができます。

偉大なのは仏陀です。

仏陀が、それまで誰も見たことのなかったクオークと 心心所を発見し、それら相互の関係性と、それらの内に潜む無常・苦・無我の性質を観察する修法、vipassanaを開発し、確立されたのですから。

仏陀の教えをなぞり、追尾する我々は、皆法友であり、法の仲間です。

指導者への過剰な心酔は「自分の頭で考え、理性的に、知的に修行するように」という仏陀の教えに反します(仏陀は、仏陀に心酔する余り、外出先から戻った仏陀に、いの一番に会いに来た男性修行者を、叱責しています)。

パオ・メソッドは素晴らしい教えですが、パオ・セヤドーは、ご自身の教えをパオ・メソッドと呼ばれることを嫌っています。

日本のパオ禅者は、この事実を胸に、冷静に、知性的に、智慧をもって、修行されるようお勧め致します。

なお、仏陀の教法にも、パオ・メソッドにも、<教師の握り拳>はありません。仏陀の教法に、秘法などないのです。秘法を掲げて己を飾り弟子を募る者は、商売であり、カルトです。

 <緬甸パオ森林寺院/ヤンゴン分院所属/Pañña-adhika Sayalay 般若精舎>